大阪市は総合評価方式を見直し、賃上げに取り組む企業を評価対象に加える新たな項目を盛り込んだ。適用対象も予定価格6億円超から3億円以上の工事へと拡大し、価格以外の要素を重視した選定を強化。いずれも2026年度の発注案件から適用する。18日に改正内容を公表した。
新たな評価項目「賃上げなど給与増の取組」は、直近の事業年度または暦年で従業員の給与が増加した企業に対し加点を行うもの。
大企業は1人当たりの平均受給額が3%以上、中小企業などは給与総額または平均受給額が1・5%以上増加していることが要件となる。1点の加算対象として、企業の社会性や信頼性を評価する項目群に加える。
加点を受けるには源泉徴収票の法定調書合計表や法人事業概況説明書などの提出が必要で、税理士や公認会計士の証明書でも代替可能。退職者の影響や超過勤務手当の除外など、企業の実情に応じた柔軟な評価方法も認めており、継続雇用者の基本給での評価や臨時支出・役員報酬を除いた集計も許容される。
今回の賃上げ加点評価は、国の直轄工事で導入されている「賃上げ表明」と異なり、事前の意思表明ではなく、過去の実績を基に加点の有無を判断する。例えば26年度の発注案件では24、25年度の給与増加状況が評価対象となる。実際に賃上げが行われていれば加点する。
企業の区分方法にも違いがある。直轄工事では法人税法に基づき大企業と中小企業を分けているが、大阪市は中小企業基本法による判定も認めており、事業者の申告に応じた柔軟な運用とする。
市は物価高騰の影響が続く中で企業の健全な経営と働き手の処遇改善を後押しし、持続可能な建設産業の実現につなげたい考え。今後、関係事業者向けに制度の説明を行い、円滑な移行を図る。
総合評価方式の適用範囲は、原則として予定価格3億円以上の工事へと拡大する。従来の6億円超からの引き下げにより、制度の適用件数を広げることで、企業の技術力や働き方への配慮など価格以外の要素を反映した選定を進める。内容に応じて3億円未満の工事にも柔軟に対応する考えを継続する。