今年の通常国会で成立した改正災害対策基本法に基づき、内閣府に設置された次官級ポスト「防災監」。政府が2026年度創設を目指す「防災庁」の設置準備も担う。1日付で就任した長橋和久氏は「国民の命と暮らしを守る仕事に重責を感じる。これまで培ってきた経験、知見を出し切る」と抱負を語る。事前防災や地方自治体、民間との連携強化を重点課題に掲げ、建設業の重要性も強調する。
--防災監の役割は。
「激甚化、頻発化する豪雨や切迫した巨大地震を考えると、事前防災と発災後の司令塔機能の強化が求められる。国難級の巨大災害が起きても、国家機能や経済活動を維持できる体制を早急に構築することが必要だ。災害時には、防災監が高度な調整機能を担い、各府省庁にまたがる施策を客観的に見ながらうまく連携させ、穴のない対策を取っていかなくてはならない」
--今の防災体制の課題をどう捉えているか。
「災害が起こると事態対処に追われ、通常業務がパンクしていた。実際に24年は能登半島地震が発生し、南海トラフ地震や首都直下地震に備えた業務を中断せざるを得なくなってしまった。組織体制として不十分な一面があったため、25年度から内閣府防災部門の体制を大幅に拡充した」
「防災・減災に国の総力を挙げる必要もある。大災害が起これば、国や都道府県、市町村など行政全体でリソースが不足する。企業やボランティアなど民間と一緒になった体制を整えていく。官と民をつなげ、みんなが助け合い、協力する社会をつくるべきだ」
--今後の取り組みは。
「事前の防災対策が最も重要になる。被害想定を含めた科学的な知見に基づき、災害時に命を守るための対策をさらに講じていく。1日に公表した新たな南海トラフ地震防災対策推進基本計画には、10年ですべき対策が盛り込んである。絵に描いた餅にならないよう、関係省庁や都道府県、民間としっかり連携していく」
--防災庁設置準備室長代理も務める。
「防災庁は計画担当、事態対処、地域防災担当とそれらを総括する部署、官房機能などが必要になる。特に広報はリスクコミュニケーションの観点からも重要だ。首都直下地震を考え、防災庁自体の機能を維持するため代替機関の設置も検討している」
--復旧・復興は建設業が担っている。
「建設業は日本の国土を守っている。産業全体で、若者が入ってくる魅力的な業界であり続けてほしい。魅力ある建設業にしていくため業界全体で考える必要がある。南海トラフ地震が起これば全国の半分程度の建設会社が被災するかもしれない。今後、第1次国土強靱化実施中期計画に基づき各種施策が進んでいく。行政と業界全体が連携して取り組んでいかなくてはならない」。