鉄道インフラメンテナンスの先進企業として培ってきた技術力をさらに磨き、JR東日本の大型プロジェクトや公営・民鉄の旺盛な需要を取り込む。協力会社と一体となった担い手の確保や育成にも注力。手厚い処遇やきめ細かな経営助言などを展開し、施工体制の確保に万全を期す。
--経営環境の見通しは。
「2025年3月期は連結で過去最高の売上高を更新し、各利益とも最高益を達成した。中長期的にJR東日本の大型プロジェクトや公営・民鉄でも維持更新などの需要が期待され、26年3月期も増収増益を見込んでいる。5カ年中期経営計画『アクションプラン2029』最終年度の29年3月期連結目標も上方修正し、売上高を1700億円以上から1900億円以上、自己資本利益率(ROE)を8%以上から10%以上に引き上げた。労務費の上昇や資材の高騰など不確定要素は多いものの、高い目標に挑戦する」
--注力する取り組みは。
「JR東日本の大型プロジェクトでは、首都圏を中心に当社の技術力が生かせる高架橋や駅ホームなどの耐震補強、ホームドアの整備に力を注ぐ。31年度からは新幹線の橋梁やトンネルといった土木構造物を大規模改修するプロジェクトが本格的に始まる。グループ会社と共に工法や材料などの技術開発や施工環境の整備に取り組み、工事を効率よく進められるようにする。技術開発では自動化施工も課題の一つになる」
--公営・民鉄の戦略は。
「線路メンテナンスの需要をさらに取り込んでいきたい。関東の民鉄では25年3月期の受注が80億円(24年3月期34億円)と大幅に増加し、26年3月期も増えるだろう。当社の特殊技術を生かすことで特命のような随意契約による受注も可能になるため、この分野を伸ばしていく方針だ。高架下リニューアルや駅付近でのホテル建設などの動向も注視している」
--担い手の確保育成は。
「持続的成長を実現するためには協力会社との共存共栄が不可欠だ。保線の協力会社に対し3年連続で作業員単価を引き上げ、昨冬に一時金を支給したことなどが離職率の大幅な低下につながっている。当社社員が後継者問題や金融機関とのやりとりなど経営面のさまざまな助言も行っており、6月にはこれらの業務を所管する『グループガバナンス部』を新設した」
「施工技術や安全レベルの向上でも協力会社と連携する。技術開発成果の共有を目的にJR東日本のパートナー会社と毎年開催している『機械作業技術交流会』を全国の線路メンテナンス会社に広げ、今年はさらに規模を拡大する予定だ。軌道業界全体の技術革新をけん引していく」。
(6月26日就任)
(いせ・かつみ)1988年東京大学工学部土木工学科卒、JR東日本入社。常務執行役員総合企画本部復興企画部担当兼鉄道事業本部設備部担当、代表取締役副社長兼技術イノベーション推進本部長などを経て2025年6月現職。「活発に会話をしないとイノベーションは起こらない」という姿勢で成長に導く。石川県出身、60歳。