頻発している豪雨などに対応するため、東京都は調節池の建設を加速している。また、地下河川整備の事業化に向けた検討も進めている。大規模地震に対しては木造住宅密集地域を局所的に解消する新たな施策を展開。防災性向上のため、道路・公園など公共施設の整備を誘導する。小池百合子知事は「『備えよ、常に』の精神でさらに強靱化を進める」と、2025年度も防災対策をブラッシュアップする考えだ。
--気候変動の影響により自然災害の規模が大きくなっている。
「あらゆる災害から都民の命と生活を守る『首都防衛』を都の責務と考え、ハード・ソフト両面で政策を展開している。激甚・頻発化する風水害に対しては23年度までに整備した地下調節池の総貯留量が約264万立方メートルとなった。35年度までに約365万立方メートルへと引き上げる。事業化に向け検討している地下河川は、複数の地下調節池を東京湾まで連結させるもので、洪水を防ぐ効果は大きい」
--首都直下地震にはどう備える。
「災害時に救助や物資の運搬を行う緊急車両が通行する緊急輸送道路の沿道建物の耐震化を急ぐ。地震で電柱が道路に倒れ込むのを防ぐため、無電柱化も引き続き推し進める。今も都内に残る木造住宅密集地域では、対策が必要な地区を町丁目単位で『防災環境向上地区』に指定した。緊急車両が通行可能な道路の建設や公園の整備、老朽建物の建て替えなどを促進する」
--都市間競争を勝ち抜くには交通インフラの拡充が欠かせない。
「東京メトロの有楽町線と南北線の延伸に加え、多摩都市モノレールを箱根ケ崎(瑞穂町)へ伸ばすなど、交通の利便性をさらに高める。いずれも24年度に都市計画を決定済みだ。30年代半ばの開業を計画している。道路網の強化に向けては、三環状道路(中央環状線、東京外かく環状道路〈外環道〉、首都圏中央連絡自動車道〈圏央道〉)の整備を進める。1月時点で約8割が完成し、中央環状線内側の渋滞による損失時間は約5割減少している。都市の骨格を形成する幹線道路の建設も並行して進める」
--都心部では都有地を活用したまちづくりが活発だ。
「渋谷区の神宮前5丁目地区では旧こどもの城と周辺の都有地を活用し、創造・交流図書館機能を軸にして誰もが集い・つながる、開かれた『智の創造拠点』を創出する。再開発に取り組んでいる中央区の旧築地市場跡地では、約5万人を収容できる大規模集客・交流施設の導入などが事業者から提案されており、外部有識者の意見も踏まえてまちづくりを推進する」
--多摩地域でも再整備に向けて動き出した。
「3月に多摩のまちづくり戦略を策定した。個性を伸ばし、持続可能な地域『緑のTAMA手箱』を目指す。多摩ニュータウンでは諏訪・永山地区など3エリアで先行プロジェクトを展開し、豊かな暮らしと安心な子育て、地域の活力が調和したまちを実現する。長期的な視点を持ちながら成長と成熟が両立したまちづくりを進め、日本の成長をけん引する」。