中部地方整備局は28日、本年度のダム事業費等監理委員会・部会を名古屋市内で開いた=写真。天竜川ダム再編事業部会で中部整備局は、洪水調節機能をトンネル放流設備に変更したことなどを説明し、工期も2031年度から38年度に延長。事業費も現行の約790億円から約1900億円に見直した。委員は工期と事業費の見直し内容に理解を示し、さらなるコスト縮減と工期短縮に努めることを求めた。中部整備局は30日に開く天竜川水系流域委員会で事業の再評価を審議する。
天竜川ダム再編事業は、佐久間ダム(右岸・愛知県豊根村、左岸・浜松市天竜区佐久間町)に新たに洪水調節容量を確保し放流設備を増強する。恒久的な堆砂対策としてダム湖に流入する土砂の一部を河川に還元するための堆砂対策施設も整備する。
洪水調節では、これまで既設コンジットゲート改造案やクレストゲート増設案など複数を検討していたが、経済性などを総合的に判断しトンネル放流設備に変更した。ダム湖右岸に呑み口部を設置し、延長約400メートルのトンネル部(内径約14・5メートル、外径約16・5メートル)と延長約146メートルのシュート部・減勢工部を整備する。堆砂堆積施設として延長約1・3キロのベルトコンベヤートンネル(馬蹄〈ばてい〉形、高さ約5メートル、幅約4メートル)も整備する。
全体のスケジュールも示し、洪水調節の管理設備工事は26~30年度、放流設備工事は30~37年度、堆砂堆積施設工事は28~35年度を予定している。
現行の総事業費約790億円は08年度単価に基づき試算していた。事業費の変更要因は、物価上昇など社会的要因の変化が649億円増、増設放流設備形式の変更や堆砂対策工法の変更など現場条件の変更等によるものが208億円増、工期延伸によるものが6億円増など。
中部整備局は、工事が集中するダムサイト周辺の施設設計にCIMを活用し、施工ヤード縮小や工事工程の短縮、仮設備の共用などのコスト縮減を検討する。浚渫土砂を運搬するベルトコンベヤーなどにも新技術を活用しコスト縮減を図る方針。