国交省/ウクライナ復興へ遠隔施工技術の導入図る、25年秋にも現地でデモ実施

2025年8月1日 行政・団体 [1面]

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 国土交通省は、ロシアの侵攻で甚大な被害を受けているウクライナの復興事業に、遠隔施工技術を強みに日本企業の参画を後押しする。復興需要は約80兆円に上るとされる一方、現地では人手不足が深刻な課題となっている。そこで同省は遠隔施工を活用したがれき処理などのビジネスモデルを構築し、復興需要の獲得を目指す。7月下旬に職員を現地に派遣しヒアリングを行った。10月には現地で遠隔施工のデモンストレーションを行い、有用性をアピールする。
 遠隔施工に関するビジネスモデル構築は5段階で進める計画。既にステップ1として技術条件の確認やPR活動を完了。ステップ2となる2025年度は、ウクライナ国内での技術実証と同国仕様の遠隔施工技術の開発を目指す。ステップ3は現地での部分導入と保守体制の構築、ステップ4が現地運用拡大とプロジェクトの要件化を計画。ステップ5は同国内での定常運用と現地施工の支援、レンタル事業化を実現させる。
 10月ごろ国交省と日本企業は、現地で遠隔施工の現地実証実験を行う予定だ。同省は建機メーカーだけでなく、ゼネコンやレンタル会社など多様な業種の企業を巻き込み遠隔施工を日本の強みとし、復興プロジェクト受注への競争優位性につなげたい考え。将来的にはウクライナでの経験を日本に逆輸入し、日本の建設現場の生産性向上にも生かす。
 国交省は1月、「日本ウクライナ・国土交通インフラ復興に関する官民協議会(JUPITeR、ジュピター)」を立ち上げた。3月末までに約160社が加盟。復興プロジェクト参画に向けた情報収集・提供や技術紹介、案件発掘などを進め、定期的にビジネス創出イベントも開催している。3月には初の官民ミッションとして、国交省の小笠原憲一官房海外プロジェクト審議官と民間企業が首都キーウを訪問。ウクライナの地方・国土発展省や現地企業などと意見を交わした。秋以降、第2回官民ミッションの現地派遣も予定している。
 初の現地訪問では、特にウクライナ側が日本の遠隔施工技術に強い関心を示した。危険な現場での施工や、戦傷者や女性の現場参加を可能にする技術として注目された。このため遠隔施工に絞り、ウクライナ政府や国際機関を巻き込んだがれき処理への本格導入を目指すこととなった。