CCUSに異業種熱視線、データ集積とメリット拡大の循環を/振興基金フォーラムで

2025年8月4日 行政・団体 [1面]

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 「300万人の同質的なデータがある。そこにサービスを提供できるのは事業者にとってたまらない魅力だ」--。建設キャリアアップシステム(CCUS)運営主体の建設業振興基金(振興基金、谷脇暁理事長)が7月31日に開いた「CCUSフォーラム2025」で、金融やITなど異業種の事業者がCCUSの可能性を語った。CCUSの登録と就業履歴蓄積が拡大し、膨大なデータが日々集まる環境となればビジネス展開の幅が広がる。異業種の目線からも技能者本人などのメリット拡大を期待する声が挙がった。
 CCUSが蓄積する膨大なデータを活用したビジネス展開の動きは、登録技能者・事業者に特典サービスを提供する「CCUS応援団」への参画という形で広がっている。フォーラムで谷脇理事長は建設技能者という同質性を持ったカテゴリーのデータを蓄積し、経歴・資格を含めて真正性が確保されたCCUSの独自性を強調。他産業にはないこの特色に強く興味を示す事業者が応援団などに増えている。
 異業種が参加したトークセッションではCCUS実装後の未来像が話題に上った。保険業界から示されたのは技能レベルに応じた損害保険などの価格調整の可能性だ。大規模災害が頻発し過去の災害データが役に立たないように「リスクの予見と制御」が難しくなっている。技能レベルの高さとリスク軽減の相関関係が裏付けられれば、それに応じた価格調整が可能になる。現場で日々集まるデータを事故の未然防止に生かすなど、新たなサービス開発も展望する。
 IT業界の関係者はCCUSが利用者に「報いる」仕組みとして一層発展することを期待。技能者本人が積極的にデータを提供し、それに応じ報酬やメリットが得られる循環構造をつくる重要性を強調する。技能レベルと報酬や補償の関係性を可視化できれば、モチベーション向上で離職率低下などが期待できる。CCUSのデータを基に的確な技能訓練をアドバイスするサービスを展開するなど、教育投資の最適化につながる可能性も示した。
 基調スピーチした蟹澤宏剛芝浦工業大学建築学部教授は、データを活用した付加価値創造の動きを念頭に「まずは登録し、しっかり入退場管理(就業履歴蓄積)してもらう。加えて能力評価を行う。この三位一体でますます生きるシステムになる」と訴えた。