大成建設/東洋建設にTOB開始/洋上風力など成長領域で統合効果を追求

2025年8月9日 速報

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 大成建設は12日、東洋建設に対するTOB(株式公開買い付け)を開始する。買い付け価格は1株1750円、期間は9月24日まで。東洋建設は買収提案に賛同しており、TOBが成立すれば年内にも大成建設の完全子会社となり、上場廃止となる見通しだ。TOBなどの総額は1600億円を見込む。
 両社は、それぞれが強みを持つ土木・建築分野で技術を補完し合い、洋上風力発電や建築リニューアル、海外事業などの成長分野での受注拡大を目指す。人材不足やサプライチェーン(供給網)の課題にも連携して対応し、スケールメリットを最大化する。

 ◇技術と人材の相互補完で競争力強化◇
 都内で8日に行われた記者会見には、大成建設の田中茂義代表取締役会長、東洋建設の吉田真也代表取締役会長兼執行役員兼CEO(最高経営責任者)に加え、東洋建設の筆頭株主であるヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(YFO)の山内万丈代表が出席した。
 山内氏は「現経営体制による2年間の改革で、東洋建設の時価総額は60%以上増加した」とした上で、人口減少に伴う国内市場の縮小や直面する担い手不足に対応するため「業界再編による生産性向上が急務だ」と指摘。「(東洋建設にとって)次の成長ステージに向け必要なパートナーシップだ」と語った。
 田中氏も「完全子会社化でシナジーの具体像がより明確になってきた」と述べた。特に浮体式洋上風力発電分野での連携に注力する方針で、東洋建設が保有するTLP(緊張係留)技術と、大成建設が開発しているコンクリート製セミサブ型基礎構造などを組み合わせ、大型化と高効率化を推進する考えを示した。

 ◇経営戦略の転換点に◇
 TOBは大成建設が5月に提案。東洋建設は独立社外取締役による特別委員会で内容を精査し、8日の取締役会で賛同を正式決定した。同社は2022年にインフロニア・ホールディングスへの参画を検討したものの、実現には至らなかった。吉田氏は「当社主導の資本戦略も模索してきたが、今回の提案は企業価値の向上につながると判断した」と説明した。
 大成建設との連携で、海上土木・建築に強みを持つ東洋建設と、陸上インフラや建築分野に実績を持つ大成建設との相互補完関係が形成され、幅広い分野での協業が可能になる。中でも洋上風力は成長戦略の中核を成す。
 田中氏は「TOB成立後は、できる限り早期に統合効果を顕在化したい」と述べ、デジタル化や人材戦略でも連携を進める意向を示した。具体的には、ロボティクスやICTを活用した施工プロセスの高度化、主要資材の共同調達によるコスト最適化、人材交流や研修システムの共有による技術力の底上げを掲げる。

 ◇統合によるスケールメリットに期待◇
 25年3月期の連結業績は大成建設が売上高2兆1542億円、営業利益1201億円。東洋建設は売上高1726億円、営業利益116億円だった。統合で売り上げ規模の拡大に加え、技術力・人材力の強化といったシナジー(相乗効果)が期待できる。
 建設業界は、少子高齢化による人材難や、カーボンニュートラル(CN)を背景とした社会インフラの高度化といった課題への対処を迫られている。今回のTOBは、そうした課題への対応と成長領域への展開を見据えた戦略的な一手といえる。今後は統合プロセスの着実な進捗とともに、スケールメリットを生かした経営戦略の立案力と実行力を発揮する局面を迎える。

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