公共建築工事の積算基準/国交省が市場単価見直し、歩掛かり設定し積み上げ式に

2025年8月18日 行政・団体 [1面]

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 国土交通省は公共建築工事の積算基準で採用している材工一式の「市場単価」の一部を見直し、労務費などの内訳が把握可能な新しい方式の積算単価を導入する。改正建設業法で規定する「労務費に関する基準(標準労務費)」の検討と連動して官房官庁営繕部が進めていた歩掛かり調査の結果を反映。中央建設業審議会(中建審)が標準労務費の初弾を11月ごろに作成・勧告するのと同じ時期に、鉄筋と型枠の両工種を新方式の単価に切り替える形で積算基準を改定する。
 国の統一基準「公共建築工事標準単価積算基準」の改定に向け、関係省庁連絡会議で準備を進める。現状は直接工事費の算出に▽材料価格▽複合単価▽市場単価▽見積単価-の4方式を用いる。市場単価は民間調査機関の物価資料に掲載されている元下間の取引価格の調査結果で、18工種40分類(電気・機械設備工事を含む)に適用している。
 11月ごろの改定を見込むのは歩掛かり調査が進展した鉄筋工事の「加工組立」と「圧接」、型枠工事の「型枠」の2工種3分類。改定と同時に公表する予定だが、実際の適用開始時期は未定。
 改定後は標準的な規格・仕様で歩掛かりを設定し、公共工事設計労務単価から労務費を算出するなどの積み上げ方式の積算に変わる。引き続き物価資料も参照し、標準以外の規格・仕様では市場取引の結果を掛け合わせる新たな方式となる。新方式の考え方などは、国の統一基準の審議などを行う「公共建築工事積算研究会」に設置した学識者や業界団体、行政機関で構成するワーキンググループでまとめた。
 官房営繕部は市場単価を適用する鉄筋、型枠以外の工種でも歩掛かり調査を進め、必要なサンプルを得た工種から積算単価を順次見直す方針だ。2022年度以降、▽鉄筋▽型枠▽コンクリート▽配線▽ダクト設備▽左官▽保温-の7工種で調査を推進。25年度からは内装、塗装の2工種でも調査に取り掛かる。
 積算単価見直しの目的は現場実態を反映した適正な予定価格の設定だが、新たに設定した標準的な歩掛かりを標準労務費作成に活用する狙いもある。市場単価は労務費などの内訳が把握できず、標準労務費の作成に活用できない。公共工事では土木よりも建築で市場単価が多く使われており、工種ごとの材工分離などの対応が必要とされていた。