労働政策審議会(労政審、厚生労働相の諮問機関)の安全衛生分科会は5日、改正労働安全衛生法に基づいて整備される個人事業者の業務上災害報告の運用に関する改正省令案を了承した。一人親方などの個人事業者が死亡または4日以上の休業となった場合、労働基準監督署に関係者が報告することを罰則なしの義務とする。改正省令は11月の公布、2027年1月1日の施行を目指す。
個人事業者の業務災害を網羅的に把握するのが狙い。集まった情報は政策に反映されることになる。個人事業者向けの業務上災害報告は、労働者死傷病報告を参考にしている。改正省令案によると、労働者と同じ場所で就業する個人事業者が対象になる。災害の発生場所では、直近上位の注文者が災害を把握した場合、労基署に災害を遅滞なく報告する。事実を伝達・報告できる場合は、個人事業者が報告する。中小企業の事業主と役員の業務上災害は、所属企業が報告する。
個人事業者の精神障害事案は、労基署に原則電子情報で直接報告できるようにする。内容は、保険番号、事業場、災害が発生した事業場、工事名、元方事業者名など。報告によって個人事業者が不利益を受けないことも定める。電子申請が前提ながら、当面は紙での報告も認める。厚労省は、電子申請に伴うシステム開発を進めるため、省令の施行を27年以降にする。
報告制度の運用に伴い、厚労省は「労働者と同じ場所」の考え方、個人事業者から報告主体への報告義務が発生する具体的なケース、報告主体が災害発生を知り得なかった場合の考え方などを通達などで明らかにする。報告者の負担を減らす措置も講じることにしている。