八潮市道路陥没事故/埼玉県の原因究明委が中間報告、硫化水素で管路腐食

2025年9月8日 行政・団体 [5面]

文字サイズ

 埼玉県八潮市で発生した大規模な道路陥没事故に関連し、県の原因究明委員会が議論の中間報告を4日に公表した。究明委は陥没について「硫化水素で下水道管が腐食したことに起因する」と結論付けた。腐食で起こった下水道管の亀裂から土砂が流入し、道路直下の地中に空洞が発生した可能性が高い。究明委は年内にも最終報告をまとめる。
 専門家で構成する「八潮市で発生した道路陥没事故に関する原因究明委員会」(委員長・藤野陽三城西大学学長)の第3回会合を同日都内で開いた。地中の空洞について、究明委は現地の土を使った複数の実験で「小規模な空隙(げき)でも土砂が流出し、空洞が形成されることを確認した」と報告。道路と下水道管のどちらが先に崩壊したかは、現時点で「特定できない」とした。亀裂として想定する候補には▽裏込め注入孔内の充填剤に生じた空隙▽1次履工のPCセグメントシール材の収縮▽1次履工のセグメント間継ぎ手の空隙(外圧による変形など)-などを列挙している。
 道路陥没につながった下水管は1983年に整備され、供用から42年が経過していた。内径は約4・7メートル。県は定期点検以外に、硫化水素濃度が高いと想定される地区で調査を実施していた。23、24年の調査で現地の硫化水素の濃度は陥没箇所の直上流にあったホールで「年平均81~99ppm」。日本下水道事業団(JS)の「下水道施設の腐食環境分類」で、コンクリート腐食の発生リスクが最も高いとされる「I類」(年平均50ppm以上)に該当する過酷な環境だった。
 会合後、藤井委員長は「再発防止のためにも事故の教訓をくみ取り、点検時に見逃せない留意点を最終報告に盛り込みたい」と述べた。大野元裕知事は中間報告を受け「大規模な下水道管の点検・調査方法の抜本的見直し、対策方法の確立など浮き彫りになった課題について、引き続き国に対しても積極的な取り組みを求める。下水道施設の安全確保に努めていく」とコメントした。