石破茂首相退陣表明/補正予算の先行き不透明に/国土強靱化「1年目が大事」

2025年9月9日 行政・団体 [1面]

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 石破茂首相が退陣を表明した。物価高などに対応する経済対策を今秋に策定する意向を示した直後の決断。経済対策に基づく補正予算で例年措置されている国土強靱化関係予算などの先行きは不透明となった。補正予算案編成までのスケジュールの遅れは避けられず、少数与党が野党の協力をどう取り付けるかも見通せない。後任となる新首相の下で、公共事業予算の獲得を巡る攻防は激しさを増すとみられる。
 2026年度から5年間の「第1次国土強靱化実施中期計画」の1年目分は補正予算で前倒し措置される可能性が高い。25年度までの「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」と同じ手法を踏襲するのが濃厚だ。
 経済対策は例年、首相による閣僚への指示がキックオフとなる。その後に施策の取りまとめと、裏付けとなる補正予算案の編成作業が同時に進む。コロナ禍以降、補正予算は膨張傾向が続く。首相交代を歳出抑制のきっかけにしたい財務省と、予算獲得を目指す国土交通省などとのせめぎ合いが激しくなりそうだ。
 国土強靱化実施中期計画の事業規模は5年間で「おおむね20兆円強程度」。このうち1年目に充てられる規模が焦点となる。今後の見通しを立てる意味でも「1年目こそ大事だ」と訴える声は建設業界内外に多い。相次ぐ大規模災害やインフラ老朽化への対応が喫緊の課題との認識が広がっており、国土強靱化に予算を割くことに「野党からも理解を得られるのでは」との見方もある。
 防災庁の創設や「地方創生2・0」、賃上げなどの重要政策が次期政権に引き継がれるかも注目だ。石破首相は建設業関係の議員連盟で要職に就いており、建設技能者の賃上げや評価向上に熱心だったとされる。公共事業予算や建設業関係施策で指導力を発揮する新首相の誕生が期待される。