経済産業省は、水深500メートル以上や強風、高波などのある過酷海域で浮体式洋上風力発電を行うための施工技術の実証に取り組む。グリーンイノベーション(GI)基金で行っている洋上風力関係のプロジェクトの計画を今秋に改定する。過酷海域での実証事業を追加し、国費の負担上限を引き上げる。都道府県の提案を踏まえて海域を選定した上で事業者を新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募する。
排他的経済水域(EEZ)を含めて浮体式の案件形成を促すとともに、海外の市場をにらみ、事業コストの低減と量産化を進める。水深500メートル以上、強風、高波、急勾配地形・岩地盤といった自然条件が過酷な海域でも事業が行えるか実証する。再エネ海域利用法に基づく洋上風力の促進区域を日本周辺で増やすことも視野に入れている。
既に2海域で行っている実証事業とは異なる過酷な海象海域で浮体式と、大水深の係留・アンカー・ケーブルなどの低コスト化のための技術実証を進める。脱炭素の取り組みを経済成長に生かすGI基金の「洋上風力発電の低コスト化」プロジェクトの研究開発・社会実装計画を改定する。
改定案を巡る産業構造審議会(産構審、経産相の諮問機関)のワーキンググループの検討結果を踏まえ、「大水深における浮体システムの施工等実証事業」と「過酷海域における浮体式洋上風力実証事業」を計画に追加する。費用を補助する。大水深は洋上変電所などの設備の施工、安全性、耐久性、モニタリングシステムの確立も対象。過酷海域は、発電事業者を巻き込み、発電事業のプロジェクト全体のコスト低減を前提に過去の知見も踏まえ、関連技術を統合したシステム全体の実証を想定。
事業期間は大水深が2030年度まで、過酷海域が32年度まで。それぞれ27年ころ、28年ころ継続の可否を判断する。実証事業の追加に伴い、国費の上限額を変更し、大水深は従来分(40億円)と合わせて140億円とする。過酷海域は新規分として578億円を上限とする予算枠を設ける。
洋上風力について政府は40年に30~45ギガワットの案件形成の目標を設定している。再エネ海域利用法の促進区域は12区域が公募・採択の対象となり、20以上の有望区域・準備区域がある。目標に対しては道半ばの中、事業者が撤退した区域もある。ただ浮体式は導入の拡大が世界規模で見込まれ、アジア市場の拡大を予想する見方もあり、必要な施工技術の実装と事業コストを下げる取り組みを進める方針だ。