中野洋昌国土交通相と建設業主要4団体は11日に東京・霞が関の国交省内で意見交換会を開き、技能者の賃上げや建設現場の生産性向上に引き続き連携して取り組むことを確認した=写真。2025年に「おおむね6%上昇」という官民共同の賃上げ目標を各団体は会員企業と共有し、目標達成への対応を加速する。賃上げに不可欠な労務費の原資を確保するため、公共工事設計労務単価の政策的な引き上げや、公共工事の入札制度の改善などを国交省に求める声が挙がった。
意見交換会には日本建設業連合会(日建連)と全国建設業協会(全建)、全国中小建設業協会(全中建)、建設産業専門団体連合会(建専連)の4団体トップが参加した。25年の賃上げ目標は、2月に開かれた石破茂首相を交えた車座対話の場で申し合わせた。民間工事を含めた賃上げを目指す内容で、過去になくハードルの高い目標となる。
日建連は7月発表の新長期ビジョンで技能者の「所得倍増」を打ち出した。宮本洋一会長は「この将来目標を業界全体、官民で共有してほしい」と呼び掛けた。実態調査をベースに算定する設計労務単価を「政策的に引き上げる方式にしてほしい」と要請。「労務費見積もり尊重宣言」の実施率は9割超まで高まっているが、賃金の行き渡りまで把握する観点から、協力会社を対象とする初の実態調査を11月に行うと表明した。
全建の最新調査によると、技能者賃金を6%以上引き上げた(予定含む)のは会員直用で16・3%、下請で21・7%と少数にとどまる。この原因は「落札率にある」と今井雅則会長は指摘した。受注段階で下請に支払う労務費を100%確保するという意味で「賃金行き渡りの最初の関門だ」と重要性を強調。「まず直轄で100%になる施策を検討してほしい」と訴えた。
全中建の河崎茂会長も「企業努力の賃上げは限界」と厳しさを吐露し、落札率100%に近い水準で受注できる入札環境を求めた。建専連の岩田正吾会長は傘下団体・企業に「他産業を上回る処遇改善」を呼びかけていると説明。国交省に「相場を下回る請負額で発注する元請に的を絞って強力に指導を」と期待した。
2月の申し合わせでは、国交省が策定した「省力化投資促進プラン」を踏まえた各団体の計画策定と効果的な取り組みの推進も決めた。日建連は新長期ビジョンを念頭に置いた労働環境改善計画を12月に策定予定。全建は中小建設会社目線でまとめた生産性向上計画を今月決定すると報告した。
各団体トップの発言を受け中野国交相は、10月に実施する設計労務単価の基礎調査を念頭に「処遇改善の一層の取り組みを」と要請した。