勤労者退職金共済機構(勤退共、梅森徹理事長)の建設業退職金共済事業本部(建退共本部)は19日、東京都内で第4回建退共制度検討会議を開き、最終取りまとめ案を報告した。建設労働者などの処遇改善のため、技能・経験に応じた退職金を建退共制度から受け取れるようにする。複数掛け金制度の導入と、制度の民間工事への普及、手続きの電子化の推進を見直しの3本柱に据える。退職金は最低でも1000万円を目指す。
退職金引き上げを巡る建退共制度の検討が大詰めを迎えた。最終取りまとめは、国土交通省や厚生労働省など関係機関に提出されることになる。
最終取りまとめ案では、建設キャリアアップシステム(CCUS)の技能者のレベル区分に応じ、段階的に金額を上乗せした掛け金日額の標準モデルを示した。事業主が選択することも可能にする。工事ごとや厳しい労働条件(災害や危険度)などを踏まえ、柔軟に掛け金日額を10円単位で設定できる仕組みも盛り込んだ。
労務費とともに確保すべき「必要経費」となる建退共制度の掛け金は、元請と下請が掛け金相当額を見積書に明記することで発注者に示すことが必要となる。工事費の中で確実に確保される仕組みとして、CCUSと制度を連携させていく中で、現場管理の効率化、適正な履行確保、不正利用防止、災害時の紛失防止などの観点から電子ポイント方式を推進するとした。
公共工事中心だった制度の利用を民間工事に広げる施策も盛り込んだ。掛け金を見積書に明記し、必要経費として発注者に理解を求めることにしている。建設Gメンによる検証も推進する。見積書に内訳明示されることで、掛け金が発注者・受注者間、元請・下請間で適切に確保されているかを確認できるようにもする。CCUSに登録のある技能労働者のうちの制度未加入者向けに、「CCUS建退共事務組合(仮称)」を設立し、元請・下請の協力の下で掛け金納付の手続きが進むようにする案も示した。建設技能人材機構(JAC)と連携した外国人労働者への勧奨強化など、普及の取り組みを幅広く進めることも検討していく。
複数の掛け金を設ける場合、事務手続きが煩雑になることが懸念される。そこで電子ポイント方式を前提に制度とCCUSの完全連携を進め、掛け金の透明性を確保し、事務を効率化する。手続きの電子化は2030年度末をめどに、遅くとも35年度末までの移行を目指すとした。