都道府県・政令市の独自歩掛かり/「現場実態と乖離」認識強く/国交省、事例集作成へ

2025年9月29日 行政・団体 [1面]

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 国土交通省直轄工事と地方自治体発注工事で工事規模や現場実態が異なることを背景に、都道府県・政令市のほぼ半数で積算に用いる歩掛かりを独自に設定しているケースがあることが、国交省の調査で分かった。国交省の標準歩掛かりを使用せず、独自に歩掛かりを作成する理由を「現場実態との乖離(かいり)」と回答した団体は3割に達する。国交省は調査結果を本年度内に事例集としてまとめる予定。各地域の実情に合った適切な歩掛かりの作成を後押ししていく考えだ。
 地域建設業界からは、自治体発注工事の多くで小規模工事に適用する歩掛かりが存在しないと指摘する声がある。標準歩掛かりは比較的大規模な直轄工事の実態調査をベースにしており、特に市町村発注工事にはそぐわないことが多い。都道府県が直轄工事の歩掛かりを準用していると認識しないまま、それを準用する市区町村もあるとされる。
 国交省が47都道府県・20政令市に調査したところ、独自設定した歩掛かりがあるのは33団体。現場実態との乖離のほかに、受注者側からの要望や、都度の見積もりを聴取する負担軽減を求める現場職員の声を理由に挙げる団体がある。独自設定の方法は団体職員が自ら調査したり、積算事務所に業務委託するなどさまざまなパターンがあった。
 一方、独自の歩掛かりがない34団体に未設定理由を聞くと、「都度見積もり徴集で歩掛かりを設定し積算」が28団体あった。ただし「歩掛かり設定のための調査の手間」が13団体、「会計検査院から独自設定を指摘される懸念」が17団体、「作り方やフローが分からない」も7団体と多かった。
 国交省はこうした声を踏まえ、独自の歩掛かりの有効な作成方法などが分からず困っている自治体がいると判断。個別の自治体の好事例をピックアップした事例集を作り、ほかの自治体の参考にしてもらう必要性を強調する。事例集は今回の調査結果を踏まえた個別のヒアリングや分析作業を踏まえ作成する方針だ。