国土交通省が大規模土砂災害の緊急対策を強化する。地震や火山噴火に起因する土砂災害への緊急調査や応急対策のあり方で議論を本格化。新たな有識者検討会を立ち上げ、29日に都内で初会合を開いた。検討会では河道閉塞(へいそく)や火山噴火などの要因で引き起こされる大規模土砂災害を想定し、対応力を強化するための調査手法や初動体制、技術活用を議論する。
国交省は検討会の議論を踏まえ、年度内に「緊急調査の手引き」を改定する。26年度には「大規模土砂災害危機管理計画」と「火山噴火緊急減災対策砂防計画策定ガイドライン」を見直す方針だ。
新設したのは「大規模土砂災害の緊急対策の強化に関する検討委員会」。座長に鹿児島大学の地頭薗隆名誉教授が就いた。初会合では、国交省がこれまで実施した大規模土砂災害時の対応事例、土砂災害防止法に基づく緊急調査の概要、新技術の導入事例などを説明。今後は▽危険度評価▽調査手法▽対応体制-などが主要な論点になる見通しだ。
検討会では、河道閉塞や、火山噴火に起因する土砂災害の対応策について議論する。河道閉塞は地滑りや大規模な斜面崩壊などで発生した土砂が谷底や対岸の斜面まで達し、谷全体をふさぐ現象。上流側で河川の流水がせき止められ、ダムのような湛水が形成される。湛水は短時間でたまるケースが多く、決壊すれば下流に大きな被害をもたらす可能性がある。
火山噴火に起因する土砂災害は、噴火で山の斜面などに積もった火山灰などが大雨などをきっかけに動き、土石流や地滑り、斜面崩壊などを引き起こす自然災害。国交省は、火山噴火に伴って林地に堆積した火山灰が、水の流れや河川環境にどのような影響を与えたか、過去の災害事例などを交えて説明した。
委員からは「ここ数年でUAV(無人航空機)やリモートセンシング技術、人工衛星など、さまざまな技術が発達している。これらの有効活用で緊急調査対象の有無や急迫性の判断が容易になるのではないか」といった意見が出た。