エイト日本技術開発が実践している地域伴走型の農業振興が実を結びつつある。子会社のストロベリーファーム(秋田県仙北市、宮下聡一郎社長)が10年以上にわたり夏イチゴの栽培に取り組む。育て方や売り方に工夫を凝らし、着実に利益を上げていく「エイト日技流の農業振興」(宮下社長)を実践。生産者の減少に直面する農業の在り方に一石を投じ、地域の発展を支えていく。
国の食料基盤を支える農業の担い手が減っている。農林水産省の調べによると、農業者の1時間当たりの生産額(平均値)は最低賃金(全国平均額)を下回る。「『もうからない』ことが人手不足を招いている」と宮下社長は指摘する。
卸売市場で取引されるイチゴの出荷量を見ると、6~11月はほとんど流通がなく、夏だけ単価が上がっているのが現状。エイト日技は夏から秋に出荷できる夏イチゴに着目。冷涼な北東北の気候を生かし、2012年にストロベリーファームを開設した。宮下社長は「利益を出すには需要をとらえ、新たな価値を付けることが重要だ」とし、地域や産業の基盤づくりを進める。
同社は夏イチゴ栽培に取り組むだけでなく、農業振興を目的に周辺地域の農家と連携するのが特徴だ。農家が育てた夏イチゴを持ち込んでもらい、仕分けや梱包(こんぽう)などの作業を請け負う。宮下社長は「農家は手間を省けて余力を他の作物などに回せる。手数料はわれわれの収益になる。ウインウインのビジネスを地域にさらに広げたい」と展望する。
無駄な投資を防いで利益につなげる工夫もしている。ハウス内はイチゴを収穫した後の茎や雑草がそのままで、一見すると雑然としている。だが「手入れの丁寧さは収穫量に直結しない」(宮下社長)という。
イチゴ1株当たりの手入れにかかるコストから計算し、作業員の動きもモニタリング。コストをかけずに効率良く作業ができる体制を整えている。「栽培は匠(たくみ)のレベルでなくていい。販売や経営管理をプロレベルで行えば、成果は必ずついてくる」と自信を見せる。
卸売市場や農協を通さず、ケーキ店やレストランなど約450もの取引先に直接出荷しているのも強みだ。卸売市場のイチゴの規格はS、M、Lの3種類。同社はクレープやアサイーの具に使う2Sや3S、イチゴ大福に使うLLなどさまざまなサイズを出荷。一般的な市場流通は収穫したイチゴの6、7割程度しか出回らないが、同社のイチゴは約98%と無駄なく流通できている。
こうした取り組みの結果、生産額で最低賃金の2倍以上が確保できる仕組みも整ってきた。「世の中に残るインフラだけでなく、世の中に残る事業をつくることも誇るべき建設コンサルタントの仕事だ」と宮下社長。人手不足に直面する農業の将来像として事業を展開していく。