国土交通省は、建設キャリアアップシステム(CCUS)のレベル別に新たに試算した年収の目安を明らかにした。公共工事設計労務単価が賃金として支払われた場合の年収額を「目標値」とし、これ以上の実際の支払いを推奨する。最低限支払うべき下限の水準として「標準値」も同時に示し、これを下回る支払い実態がある建設業者には労務費ダンピングの恐れがないか重点調査する方針だ。実質的に建設業法に基づく指導などに結び付く数値となり、レベル別年収の重みが以前より増すことになる。
改正業法で規定する「労務費に関する基準(標準労務費)」の運用が始まる中で、レベル別年収は最終的に技能者に支払う「適正な賃金」の目安となる。設計労務単価の基礎データとなる公共事業労務費調査で把握した技能者の賃金実態をベースに、個々の技能者を相当するレベルに振り分けることで算定した。専門工事職種や地域の実情に合った目安となるよう、能力評価(レベル判定)基準がある分野など43職種を、全国9ブロックに分けて整理した。
目標値は、各レベルの賃金実態の「平均以上」として設定。設計労務単価が行き渡ることを前提とした水準と言える。全国・全職種平均の目標値は最も低いレベル1で「523万円以上」。賃金構造基本統計調査による建設業の生産労働者の実年収(23年に432万円)とは大きな開きがあり、現状では設計労務単価ベースの賃金が末端まで行き渡っていないことが分かる。
標準値は、各レベルで賃金の低い方から15%程度の技能者の年収相当と位置付ける。全国・全職種平均はレベル1で「385万円」。この金額以上の支払いを義務付ける法的拘束力はないとする。ただし下回る実態があれば、関連する請負契約で賃金原資となる労務費が低くなっていないかどうか、建設Gメンなどが重点的に確認するとしている。
レベル別年収には技能者本人に処遇面の現状の立ち位置と、将来の道筋を明らかにする狙いがある。国交省は技能者が処遇面の不満など直接通報するシステムの構築を予定。技能者が通報する際の目安としても活用される可能性がある。







