◇地域建設業の社会的価値を広める
公共工事の減少と物価高が重なり、地域建設業は事業継続の瀬戸際に立たされている。施工余力がないとの誤解が広がっている現状について、全国建設業協会(全建)の今井雅則会長が強い危機感を示した。国土交通省との意見交換会では、安定的な仕事量の確保と制度の実効性確保を通じて、地域建設業の持続性と国土の安全をいかに守るかを議論してきた。地域建設業が担う社会的価値を的確に伝える情報発信の強化に加え、利益確保できる仕組みや公共事業費の確保が不可欠になる。
全国9ブロックで2025年の秋に開いた国交省との意見交換会では、厳しい声が多く聞かれた。最も深刻なのは地域建設業の仕事量が減り、事業継続そのものが危うくなっている点だ。国や自治体が発注する公共事業は、資材価格や人件費の高騰で、実質的な建設投資額と工事件数が減少傾向にある。こうした中、実態と異なる情報が流れ、公共工事を発注しても「建設業は施工余力がないため施工できない」という誤った認識が広がりつつある。
□中長期的な公共工事量の「見える化」が不可欠□
これは国の安全保障にも関わる問題だ。実際には発注件数が減り続ける中で、中小建設会社が強い使命感だけで地域の社会基盤整備を支えている。このままでは地域建設業は持ちこたえられない。予算執行に必要な施工余力は十分に存在する。現状を正確に伝え、誤解を正す必要がある。国土、国民を守っていかなければならない。
地域建設業は安定的な仕事量が確保され利益が出て、初めて生産性向上につながる設備投資やICT導入、人材育成に踏み出せる。将来の仕事量が見通せなければ、後継者に将来を託すこともできない。利益確保のため、中長期的な公共工事量の「見える化」が不可欠である。
働き方改革では地域特有の課題も存在する。例えば、豪雪地域では冬季の稼働日が少なく、逆に夏場は高温で作業が制限される。総労働時間を増やすべきだとは考えておらず、残業時間の上限緩和を望むものでもない。休みを確保しつつ稼げる日数を柔軟に配分できる制度として、変形労働時間制の柔軟な運用が必要だと考える。
□補正予算の早期執行と当初予算の底上げを□
全建が要望活動で最も訴えたいのは、公共工事縮小による“悪循環の回避”である。仕事が減れば廃業が進み、さらに公共投資を抑えてよいという論調が生まれる。建設業が地域の安全保障を担っているという認識を広げる必要がある。予定価格の適正化も重要な課題で、元請の経費や利益が極端に圧縮される現状は持続可能性を損なう。賃金を行き渡らせるにも、資材価格を適切に支払うにも、人材を獲得・育成するにも、まずは予定価格が正しく設定されなければならない。
25年度補正予算は前年度補正より増額されたが、全建はさらに踏み込んだ早期執行と当初予算の底上げを求めている。当初予算は長らく横ばいであり、全体として公共事業費を底上げしてもらいたい。26年度からの第1次国土強靱化実施中期計画は5年で20兆円強の事業規模となる。計画的な事業執行と合わせ、重要なのは年間を通した公共事業費の確保である。
□最先端技術を駆使する産業イメージに□
25年12月に改正建設業法等が全面施行された。川上から川下まで同じ方向で動く環境が整うことを期待している。資機材や労務費の高騰を受けた価格転嫁は浸透しつつあるが、対応を拒む取引先も少なくない。発注図面が不完全なまま進む工事は追加対応が多く、発注者側の人員不足も構造的な課題として浮かび上がる。
地域建設業が防災・減災や災害復旧の担い手として果たす役割は大きい。誰よりも早く現場に駆け付けるのは地域建設業だ。社会的な存在価値をより認めてもらう必要がある。
最先端技術を使いこなす産業という新たなイメージづくりも欠かせない。建設業とロボット技術には親和性がある。担い手不足など建設業と同様の課題に直面する農業・物流分野では、既に省力化技術が広がっている。災害現場の危険作業や重労働はロボットが担い、運用や計画を人が支える形が望ましい。地方の中小企業が自力で高額な機器を導入するのは難しく、国が先導して補助制度やAIを活用した生産性向上施策を進めるべきだ。
□安全保障と地域経済、地域創生の柱に□
現政権が経済再生や国土強靱化の重要性を明確に示していることは、私たちにとって大きな励みとなっている。地域を支える建設業は国の安全保障と地域経済および地域創生の柱である。災害対応や地域インフラ維持に尽力する建設会社は地域に欠かせない存在であり、その社会的価値を一段と広めたい。施工能力不足を前提とした誤った認識を払拭し、地域建設業の現実を正面から伝えていく。
公共工事の減少と物価高が重なり、地域建設業は事業継続の瀬戸際に立たされている。施工余力がないとの誤解が広がっている現状について、全国建設業協会(全建)の今井雅則会長が強い危機感を示した。国土交通省との意見交換会では、安定的な仕事量の確保と制度の実効性確保を通じて、地域建設業の持続性と国土の安全をいかに守るかを議論してきた。地域建設業が担う社会的価値を的確に伝える情報発信の強化に加え、利益確保できる仕組みや公共事業費の確保が不可欠になる。
□政府・与党らに公共事業予算確保など要望□
全建は、「地域の守り手」である地域建設業が安定した経営を実現できるよう政府・与党などに予算確保や予定価格に直近の実勢価格の適切な反映などを要望している。第1次国土強靱化実施中期計画の初年度に当たる2026年度、同計画に関連する公共事業費として少なくとも2兆円以上を確保するよう求める。公共事業関係費全体は、26年度予算として25年度の6.1兆円を大きく上回る水準の計上が地域建設業の安定経営に必要との見解を示す。
要望は全国9地区で開いた国土交通省との25年度地域懇談会・ブロック会議の意見を集約した。
内容は△第1次国土強靱化実施中期計画の初年度に少なくとも2兆円を上回る公共事業費確保△公共工事予定価格への実勢価格の反映やスライド条項の適切な運用△予定価格の上限拘束の撤廃と同価格の決定方法見直し△時間外労働の上限規制を踏まえた適正工期の設定△公共工事設計労務単価の引き上げ△建設キャリアアップシステム(CCUS)の改善△ICT施工の普及とBIM/CIMの拡大△災害時の応急復旧活動中に発生した労働災害に関する災害協定などでの補償による救済措置検討△建設業に関する広報活動の積極化△若手技術者の入職に向けた取り組み支援-の10項目だ。
国土強靱化を含む公共事業の推進や過酷な気候に対応した柔軟な働き方、物価上昇と価格転嫁などを議論し地域の声を的確に反映した。
働き方改革関連では時間外労働の上限規制を踏まえ、休日や天候などを考慮した適正な工期を設定。加えて債務負担行為の活用による施工時期の平準化が必要となる。
技能者の待遇改善に向け、賃上げに必要な設計労務単価をさらに引き上げるとともに、生涯年収増加に向け建設業退職金共済(建退共)に複数掛け金制度を導入すべきだとした。
CCUSの改良も処遇改善の鍵を握る。カードのレベルアップに応じた設計労務単価の引き上げや多能工の位置付けの明確化などを訴えた。
ICT施工の普及やBIM/CIMの拡大に向けたサポートも要請。先端技術を含めた設備投資を行う時に活用する補助金の継続・拡充、申請の簡素化を求めた。







