大手ゼネコン各社がBCP(事業継続計画)の対策を強化している。東日本大震災以降、大きな被害が発生した自然災害での教訓を踏まえ、通信手段の確保や広域での復旧支援体制を整備してきた。前例のない被害規模の拡大が懸念される南海トラフ地震や首都直下地震を想定し、「国土の守り手」として事業継続と迅速な災害復旧支援を可能にする持続可能な経営体制を構築していく。
東日本大震災では、被災地で事業所や施工現場を持つ多くの建設会社が被災した。広域にわたり停電や電話回線の不通・混乱が発生。社員や家族の安否確認や復旧支援の初動対応に手間取るなどの事態が起こった。支店単体での支援体制構築が困難だったこともあり、各社は広域被害を想定した体制整備に最優先で力を注いでいる。
鹿島は、通信インフラの代替手段や非常用電源を確保し、防災用品と燃料の備蓄も進めている。本社と支店の広域連携を含む訓練も定期的に実施する。大林組は、災害対応に当たる部門長の携帯電話を災害時優先電話に切り替え、拠点間通信の複線化に向けて低軌道衛星ブロードバンドサービス「スターリンク」も導入した。
清水建設は、震災後に緊急対策の在り方を詳細に見直し、さまざまな地震や風水害などの危機管理を想定した対策要綱を定めた。地域と連携した共助体制も強化している。大成建設はスターリンクや公共安全モバイルシステムを導入。バスなどの緊急車両や宿泊施設を確保するための災害協定も拡充してきた。
国が2025年に見直した被害想定も踏まえ、建設各社は南海トラフ、首都直下の対策強化を急ぐ。BCP対策に関連する技術やシステムの開発、設備投資も進めている。鹿島は、リアルタイム災害情報共有システム「BCP-ComPAS」を被災地への輸送方法の検討やルート決定などに活用する。大林組はこれまでに開発してきた土砂災害や震災対策関連の多くの技術にBCM(事業継続マネジメント)の要素を取り入れた。
清水建設は、地震発生直後に応急危険度判定士ら専門家の出動が難しいケースを想定し、顧客自身が安全確認できる点検ツールを提供している。今後はデジタル化し、システムを介した安全確認のサポートを目指す。大成建設は、自社施工物件に建物健全性評価システム「測震ナビ」を導入。スターリンクを搭載したキャンピングカー型の災害復旧支援車を派遣する準備も進めている。
各社は巨大地震に加え、さまざまな風水害や火山噴火なども想定した訓練にも力を入れている。竹中工務店は、グループの従業員が参加する巨大地震のシミュレーション訓練を展開中。衛星通信やIP電話アプリも導入している。今後は協力会社などの外部人材、作業員も含めた安否確認の範囲拡大や、さらなる迅速化などを課題に挙げる。
ある社の担当者は「実際の業務で携わっている人とそうでない社員では、BCPに対する意識に大きな開きがある」と話す。別の社の担当者は「協力会社なども含めた全役職員が『自分事』としてBCPに向き合えるようになってこそ、持続可能な経営体制が構築できる」と展望する。







