3月の終わりと4月の始まり。カレンダーをたった1枚めくるだけだ。昨日ときょうのあいだに、特別な橋は架かっていない。それでも人は、この境目に名前をつける。年度末、新年度。たった一日違うだけで、街は妙に背筋を伸ばす▼人の中身が一晩で入れ替わるはずがなく、昨日までの自分が、今朝になって急に新型になるわけもない。それでも「新生活」という言葉を聞くと、心のどこかで衣替えをしたくなる。中身は同じでも、気分だけは新品の箱に入れ直したくなるのだ▼けれど、ここに小さな皮肉もある。「さあ、やろう」と声高に宣言する人ほど、靴ひもを結び直す。支度は立派だが、地面を蹴る気配がちっともしない。気づけばまだスタートライン。空虚なそぶりは周囲を腐らせる▼節目とは、魔法ではない。しょせんは「よーい」と声をかけてくれる合図のようなものだ。走り出すかどうかは、結局のところ自分の気持ち次第▼カレンダーをめくった朝。大げさな決意はなくてもいい。小さく一歩だけ踏み出してみる。節目とは、気分を軽くするために、誰かが都合良くつけたもの。その程度に思うのが、ちょうどいい。






