長大、ミンダナオ島15年の歩み・上/同志との出会いが地域開発のきっかけに

2026年5月12日 論説・コラム [2面]

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 長大がフィリピン・ミンダナオ島で展開する地域開発プロジェクトが、15年の節目を迎えた。志を同じくする社内外のメンバーや現地パートナーとの縁が、小水力発電やウナギ養殖、精米といった事業として花開いた。縁が偶然で終わらなかったのは、それをつかみ取り、形にしていく不断の努力の積み重ねがあったからにほかならない。バトンを託せる若手も育ってきた。思いをつなぎながら、プロジェクトは次のステージを目指す。
 ミンダナオ島の事業を統括するのは、取締役兼上席執行役員の加藤聡氏。2011年4月に入学した東洋大学大学院経済学研究科公民連携専攻(東洋大PPPスクール)で2人の「同志」と出会ったことが、地域開発に身を投じるきっかけとなった。事業を行うSPC(特定目的会社)への出資などを担う現地パートナー、ツインピークの社長で、当時は大手ゼネコンのフィリピン駐在員だった高野元秀氏と、現在はサステナビリティ事業部サステナビリティ営業企画部長と長大フィリピン社長を兼務し、当時は他社の技術者だった大浦雅幸氏だ。
 高野氏はフィリピン駐在員として政府開発援助(ODA)案件に携わる中で、後に長大の現地パートナーとなるゼネコンのエクイパルコ社のロニー・ラグナダ社長(当時)と知己を得た。ところが、自社の海外事業が整理されたことを受け、退職してフィリピンに残る道を選んだ。「ロニーさんと築き上げたものは、私にとって何より価値があった」と振り返る。
 高野氏がロニー氏に依頼して出資を受け、11年秋、島北東部の中心都市ブトゥアン市のPPP可能性調査を東洋大PPPスクールのメンバーで実施した。そこで3人は意気投合した。「ロニーさんや高野さんのおかげでチャンスをもらった。この地域に貢献したい」。大浦氏も14年に長大へ入社し、地域開発プロジェクトに携わることになる。

 宗広裕司氏(執行役員サステナビリティ事業部長兼アグリ事業開発部長)も、プロジェクトメンバーに選ばれた。「手を挙げたわけではないが、挑戦のフィールドとして迷いはなかった」と話す。
 永冶泰司会長が長大の社長に就任したのは、公共事業への風当たりが強かった09年。現状を打開すべく打ち出した「事業推進戦略」が海外でのプロジェクト創生だった。その先鞭(せんべん)になったのがミンダナオ島を舞台にした事業。「自ら動き、やり抜ける人材がいる。それが(フィリピン進出を)決断できた理由だ」と言い切る。
 フィリピン企業への外資企業の出資比率は、法律で50%以下に制限されている。長大は小水力発電を担うAGEC、ウナギ養殖事業のCARC、精米事業のAGRACの各社に1割ずつ出資。エクイパルコとツインピークの2社が、合わせて7~9割を出資している。
 加藤氏は「長大は技術面のサポートや、他の日本企業とのつなぎ役が主な担当だった。出資比率をはるかに超える付加価値を提供し、インパクトを出せる」と力を込める。「出資のマジョリティーを担う現地パートナーとは、全幅の信頼を置ける関係でなければならない」とも話した。