近畿整備局、和歌山県、那智勝浦町/紀伊半島大水害15年シンポ開く

2026年8月25日 行事 [8面]

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 近畿地方整備局、和歌山県、和歌山県那智勝浦町は23日、紀伊半島大水害から15年を契機に、大規模土砂災害に関する調査研究や技術開発、防災啓発の成果を紹介する「大規模土砂災害対策技術センターシンポジウム~紀伊半島から広がる砂防技術~」を那智勝浦町内で開いた。関係市町村長や一般市民ら約180人が参加し、災害の教訓と今後の備えについて考えた。
 2011年9月の台風12号による豪雨で、紀伊半島では総雨量が1000ミリを超え、奈良、和歌山、三重の3県で3000カ所以上の斜面が崩壊。崩壊土砂量は約1億立方メートルに上った。17カ所で河道閉塞(へいそく)が発生し、那智勝浦町でも土石流などで29人が犠牲となった。近畿整備局は14年4月、同町に大規模土砂災害対策技術センターを設置し、深層崩壊などの調査研究や対策技術の開発を進めてきた。
 冒頭、国土交通省水管理・国土保全局の國友優砂防部長は、同センターの技術が全国の土砂災害対応にも生かされているとし、「防災への理解を深め、安全・安心な地域づくりを考える機会にしてほしい」と述べた。宮崎泉和歌山県知事は「災害が甚大化する中、共助の精神に基づき、お互いの命を守ることを第一にしてほしい」と呼び掛け、堀順一郎那智勝浦町長も事前の備えの重要性を訴えた。
 神戸大学名誉教授の巽好幸氏が「古代より人々は紀伊半島に何を見てきたのか?」をテーマに講演を行った後、市野々小学校の児童がハザードマップを使った危険箇所の確認や土石流実験など、防災学習の取り組みを発表。「この災害を私たちは経験していない。だからこそ学ぶ」と語り、教訓を未来につなぐ決意を示した。
 パネルディスカッションでは「紀伊半島大水害からの大規模土砂災害への対応」をテーマに、研究者と行政担当者が取り組みと今後の課題を議論した。
 内田太郎筑波大学生命環境系教授は、広域災害時の危険な河道閉塞への対応について「迅速に把握する技術や体制を整える必要がある」と指摘。今後の技術開発では「個別には武器が増えているが、防災教育も含め、どう組み合わせて最適な対応につなげるか、もう一歩踏み込んだ議論が必要だ」と述べた。
 国土技術政策総合研究所土砂災害研究部の高原晃宙主任研究官は、河道閉塞の把握技術として「ヘリコプターからの画像で3Dモデルを作成する手法の検討を進め、実装を目指したい」と展望を語った。
 近畿整備局の竹下航紀伊山系砂防事務所長は「那智川の支川で砂防堰堤15基の整備を完了し、今後は本川で整備を進める」と説明。奈良県内の河道閉塞対策で導入した無人化・自動化施工や、ドローン基地を用いた砂防施設の自律飛行点検の実証実験も紹介した。
 和歌山県河川下水道局の児玉祥吾砂防課長は、県土砂災害啓発センターの取り組みとして、小中学校226校で防災学習を行ったと報告。「子どもから保護者、地域へ防災意識が広がることで、地域の防災力も強くなる」と話した。
 コーディネーターを務めた大規模土砂災害対策研究機構の小杉賢一朗委員長(京都大学大学院農学研究科教授)は、「15年で対策工事による安全度と地域の防災力は向上した。一方、気候変動に伴い災害発生の危険性は高まっており、紀伊半島で培った技術や取り組みを全国へ展開していくことが重要だ」と強調した。