神奈川県西部にある人口約8500人の中井町で、生涯学習施設の建設計画が転換点を迎えている。既に設計を終え、7月に着工する予定だった。だが、準備段階で町民に対する事業費や財源の説明が遅れ、事業の見直しを求める声が高まった。戸村裕司町長は2月に計画の中断を発表。その後設置した「生涯学習施設建設等検討委員会」で議論を重ねているが、当初計画での事業再開のめどは立たず、計画撤回の可能性も浮上している。
9月28日には町役場で4回目の検討委を開いた。これまでの議論を踏まえ、町は現行計画で再開する案や、床面積を縮減する案など複数案の概算事業費を示した。当初約27億円としていた現行計画の事業費は、物価上昇を反映すると48億円まで膨らむとした。一方、規模を縮小する場合は、設計変更に伴って事業期間がさらに長期化すると説明。さらなる物価高騰の影響も受けるため、事業費の縮減効果は薄いとした。
検討委では、町が検討する学校施設の統廃合を優先する場合、生涯学習施設の建設を取りやめる考えも示された。国への補助金申請のスケジュールなども踏まえると、2027年度予算案への建設費計上は間に合わない見込み。現行計画を再開する場合でも、着工は28年度以降となる。
町では20年以上にわたり、十分な機能を備えた生涯学習施設の建設が議論されてきたが、財政状況を理由に事業化できずにいた。24年に、高速道路IC付近での産業拠点形成で税収増が見込めると判断し、検討を再開。物価や建設費の高騰を見据え、早期の竣工を目指した。25年3月には基本構想と基本計画を同時に策定し、7月に着工予定という方針を盛り込んだ。
長期の議論を経て、計画は実現の軌道に乗ったはずだったが、思わぬ落とし穴があった。概算事業費をその都度公表しなかった町の姿勢に、町民から疑問の声が上がった。構想・計画策定の協力事業者や、町民参加のワークショップ運営事業者の選定が随意契約だったことにも、プロセスが不透明との意見が出た。町民の疑問や声を踏まえ、戸村町長は2月、計画の中断を決めた。
現行計画では、老朽化した農村環境改善センター(延べ1291平方メートル)を解体し、資料館や図書館、多目的ホールなどの機能を備えた複合施設を建設する。新しい施設は設計で、2階建て延べ2746平方メートルの規模となっている。交通広場も隣接して整備する。
検討委では、委員長が「そもそも生涯学習施設は必要なのか、不要なのか」と問い、各委員は「施設規模や建設時期は検討すべきだが、町民のために施設自体は必要」との認識を示した。
町の担当者は日刊建設工業新聞社の取材に対し、計画中断の理由は「事業プロセスにあった」とし、「事業費や財源について、住民への説明が遅くなってしまった」と説明した。
25日には町長選挙が投開票される。新人で元町議の関野達夫氏は生涯学習施設計画の中止を掲げて立候補しており、選挙の動向が注目される。








