回転窓/復旧させない鉄道の思い出

2026年10月29日 論説・コラム [1面]

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 まだ幼かった昭和の時代の思い出に、祖母と何度も乗った鉄道がある。間近に水田が広がる駅まで歩き、1両編成もあった列車に乗って隣駅まで。遠くない旅を当時は楽しみにしていた▼よく晴れた日のホームと、つながれた手の心地いいぬくもり、その安心感を覚えている。駅前の薬局で「ファイト一発!」のCMで親しまれた国民的栄養ドリンクを初めて買ってもらったことも▼JR東日本が久留里線(千葉県)の久留里~上総亀山間の復旧を断念した。2027年4月1日で廃止が決まっていた区間だったが、大雨による大規模な土砂崩れで線路が流された箇所がある。再開の見通しが立たず、同社の決断に一定の理解もあると聞いた▼人口減少で存続の岐路にある鉄道は全国に数多い。発生頻度が増し激甚化している災害への備えだけでなく、被災後も想定した上で、地域の公共交通の在り方を考えていく必要がある▼祖母と乗った久留里線の記憶は、ひとかたまりの雲が浮かぶ青空と一面緑色の水田の景色とともにある。列車が運んだ人それぞれに、思い出があるだろう。たくさんの人を乗せてきてくれてありがとう。

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