BIMの課題と可能性

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BIMの課題と可能性・113/樋口一希/維持管理への援用-大林組の実践例・上  [2016年5月26日]

BIMobileの運用イメージ

 大林組がラティス・テクノロジー(本社東京都文京区、鳥谷浩志社長)とのコラボレーションのもとで開発し、運用を開始した建物維持管理ツール「BIMobile」について報告する。


 □設計施工段階のBIMよる「創る」ための建物モデルを情報端末iPadで維持管理に援用□


 前回の積算システムとの連携のように、設計施工段階で構築されたBIMによる「創る」ための建物モデルを次工程や他分野で援用する動きが顕著となりつつある。「BIMobile」は、「創る」ための建物モデルを竣工後、日々、稼動する建物の維持管理に援用するもの。

 本稿53~55回「大林組のBIM運用と推進組織」で報告した「スマートBIM」。建物情報の統合と発注者、設計会社、施工会社、専門工事会社など関係組織間でBIMデータベースを中心とした情報共有を実現するBIMプラットフォームだ。「BIMobile」は、そのコンセプトに基づいて開発され、グループ企業内だけでなく、建築主・顧客にも利用してもらえるようBIMなど専用ソフトを用いず、携帯端末iPadによる高い利便性を実現している。

 iPadは「集中的な情報化投資こそ効率的」との経営判断に基づき、現在、約7000台が稼働中で、BIMモデルビュワー「BIMx Docs」(グラフィソフト社製)導入により、工程最上流に位置する営業支援から、設計段階はもとより、施工現場での専門工事業者を交えた各種設備機器などの整合性の確保、施工図作成まで援用している。


 □BIMで作成された膨大な建物モデル=3次元データを独自の「XVL技術」で軽量化して運用□


 ラティス・テクノロジーは、主にトヨタ自動車などの製造業を対象に3次元データ活用のソリューションを提供しており、「BIMobile」では、同社が開発したXVL(eXtensible Virtual world description Language)技術を採用している。

 繰り返し論考したように、BIMによる建物モデル=3次元データは、『形態情報:Modeling』と『属性情報:I=Information』を持つ。建物モデル自体をBIMソフト上で運用する際には、『形態+属性』を統合したまま運用した方が効率的だ。インターネット環境、ハード+ソフトの急激な進化によって、膨大な3次元データの実務運用が可能となったが、iPadなどの情報端末での運用では、3次元データをより軽量化する必要があり、そのために採用されたのがXVL技術だ。

 概説すると、XVL技術では、『形態情報:Modeling』と『属性情報:I=Information』を、独自開発の『構成情報』により紐付けしたまま、画面表示時に『形態』のみをデータ容量で約1/100にまで軽量化表示している。

 自動車産業など製造業では、設計、製造の生産段階から、その後の営業、マーケティング、フィールドサービスなどに至るまで、XVL技術による3次元データの軽量化+見える化が効果を発揮している。


 □デジタル化に適した製造業での開発思想と当初は相容れなかった建築のデジタル化の課題□


 BIM導入前夜、製造業でのデジタル運用の実態を調査するため訪問した工場でラティス・テクノロジーの存在を知り、交流を始めた大林組。両社の接近遭遇を通して、ここでも「業としての建築」のデジタル化のユニークさが明らかとなった。

 製造業では、設計段階の『形態情報:Modeling』はそのまま製造工程に引き継がれ、コピー&ペイストのように1対1で大量生産される。

 建築(物)は多くの場合一品生産であり、企画・基本・実施設計と段階ごとに『形態情報』の詳細度も異なり、『属性情報:I=Information』の質や量も可変だ。最もデジタル化に向かない「業としての建築」の3次元データをいかにして運用するのかの意思疎通から共同研究プロジェクトは開始された。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)

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