BIMの課題と可能性・128/樋口一希/AU JAPAN 2016開く

2016年9月29日 トップニュース

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 BIMソフトベンダーのバージョンアップ版発売やイベント開催が相次いでいる。グラフィソフトに続き、オートデスクは9月8日にAU(Autodesk University) JAPAN 2016を開催した。建築・土木に加えて、同社が提供する製造業、メディア&エンターテインメント業向けの最新テクノロジーも横断しつつ、「建築とコンピュータの現在」を俯瞰する。


 □医療分野で実現した仮想現実や3Dプリンタの援用による「生命を救う」ための技術革新□


 特別講演「Life reverse engineering for augmented Human:人類の能力を拡張するリバースエンジニアリング」(神戸大学大学院医学研究科特務准教授・杉本真樹氏)。CTやMRIによって3次元的に造形された患者の体内臓器(環境)は、プロジェクションマッピングで患者の体の上に投影される。仮想現実(VR)技術によって、医師のヘッドマウント・ディスプレイに3次元的な体内臓器(環境)が投影され、空間上のホログラムによって手術室内の関係者間で情報共有できる。

 最も衝撃を受けたのは、特許技術Bio-Texture Modeling(R)だ。3Dプリンタによる臓器は、感触から内部の血管まで再現され、電気メスの施術で出血もする。臓器は小さく、30分程あれば3Dプリンタで製造できるため、手術中のシミュレーションも可能で、従来は不可能であった医療事故回避や繊細な医療技術の習熟に貢献している。究極のフロントローディングともいえる「感触あるシミュレーションとトレーニング」。異なる分野だが、最新技術の射程伸延は建築に対しても大いに示唆的だ。


 □生き残り策としてのBIMでの確認申請+今後に向けてBIM×CIM協働へのアプローチに着手□


 「住宅設計こそBIMを使うべき+国内初のBIM確認申請」(フリーダムアーキテクツデザイン事業開発部長・長澤信氏)。4号建築物を対象とし、法的にも抵触せずに、現状の建築確認申請のルールを変更することなく、その中にBIMソフト(Revit)による住宅の3次元モデルを持ち込む。極めて現実的な方法で「国内初のBIM確認申請」を実現した背景には、独立系の建築設計事務所としての生き残り戦略があった。硬直した状況にいかにして風穴を開けたのか。詳報するべく執筆に着手した。

 「BIM×CIMコラボでの街づくり取組みのその後」(東急建設建築本部建築部BIM推進グループリーダー・越前昌和氏)。複雑な入れ子構造の渋谷駅の機能を一瞬たりとも止めることなく、いかにして20年以降に向けて再開発を実現するのか。東急建設では「UiM(Urban Information Modeling)」という独自のコンセプトを掲げ、再開発地域を街ごとデジタル化するBIM×CIM協働に取り組んでいる。本稿では、ことさら土木分野のCIM(Construction Information Modeling)を明示的に取り上げなかったが、本事例が包含するCIM(City Information Modeling)的側面も視野に入れ、本連載でアプローチしていきたい。


 □設計図書を効率的に管理・運用+BIMから3Dコンテンツを作成するクラウドサービス発売□


 オートデスクでは、JAPAN2016開催と軌を一にしてBIM関連のサービスをリリースした。

 「Autodesk BIM 360Docs」は、建設プロジェクトの参加者が日々、作成・更新する膨大な量の資料や図面を一元管理して、最新かつ正確な資料を使って業務を行えるシステムを提供、協働業務を効率的に行えるように支援するドキュメント管理サービス。9月7日発売。

 「Autodesk LIVE」は、高品質な3Dインタラクティブ・ビジュアライゼーションを実現する技術「LIVE Design」の第一弾。「Revit」のデータから仮想現実(VR)などに使えるインタラクティブ・コンテンツを簡単な操作で作成できるクラウドサービス。9月下旬から発売。図はBIMデータのプロパティを表示している事例。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)