BIMの課題と可能性

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BIMの課題と可能性・157/樋口一希/スターツコーポのBIM戦略・2  [2017年3月16日]

BIM生産管理部の実務シーン

 デジタル技術を徹底活用して建物を総合的に管理、運用するコンサルティング・サービス「BIM-FM PLATFORM」をリリースしたスターツコーポレーションの企業戦略を探る。


 □設計施工から管理・経営に至る全工程のデジタル統合をベースに「BIM-FM PLATFORM」開発□


 スターツグループは、スターツコーポレーションを持ち株会社として、傘下に建設事業、不動産事業、管理・セキュリティー事業、金融・コンサルティング事業などを持つ。

 「BIM-FM PLATFORM」の開発では、スターツCAM(建設:設計施工・土地有効活用)およびスターツファシリティーサービス(ビル管理:FM・PM)におけるBIM-FM連携システムの運用経験をベースに、スターツコーポレーションの新規事業推進・研究開発部門が主導した。

 自社の設計施工と合わせて、外部の設計事務所と協働するし、発注者として他社ゼネコンとも協働する。首都圏を中心に約1600棟に及ぶビル管理物件を有し、投資用不動産の売買、リスク査定などのデューデリジェンスも担っている。

 スターツコーポレーションは、「創る」=設計+「建てる」=施工から「管理する」=FM+「経営する」=PM(プロパティマネジメント)に至る全工程をデジタル統合できる絶好の立ち位置から「BIM-FM PLATFORM」を開発するに至った。


 □プロジェクト成立を公に宣言して新たな組織を立ち上げワークフローそのものを革新する□


 BIM導入に向けて、社内有志が非公式に調査を開始したのは09年だ。スターツCAM社長(当時)が海外でBIMによるプレゼンテーションに接して感銘を受け、全社横断的な組織を作るべく「BIM推進宣言」がなされ、13年5月にBIMプロジェクトが発足した。

 BIMソフトのハンズオン実務研修を進める中で、14年4月には、意匠から積算、構造、施工に至るまでのデジタル連携を明確に意識し、デジタルデザイン室を発足させた。その後、複数の物件でのBIM運用を経て、設計施工段階でのBIMモデルがFMモデルへと援用できるとの実証的な知見を得て、7月にはBIM-FMプロジェクトを開始、8月にはBIM-FM準備室を発足させている。

 自然発生的なBIM導入機運をトップダウンで受け止め、短期間でプロジェクト成立を公に宣言し、組織を立ち上げ、ワークフローそのものを革新する。意思決定の速さと機動性を原動力に、12月のBIM-FMシステムの開発始動と15年9月からのシステム試験運用を経て、2年余の短期間で「BIM-FM PLATFORM」リリースへと至った。


 □デジタル技術によって設計と施工を組織的に統合して究極のフロントローディングを実践□


 「BIM-FM PLATFORM」サービスを主導的に担う組織として16年1月に発足したBIM生産管理部。設計施工部門のスターツCAMにおいてBIMの運用経験を積んだ要員を中心に26名構成で活動している。

 BIM生産管理部は、建設業の従来の枠組みを超えた新たな組織体といえる。意匠、構造、設備の領域間の壁を取り払うとともに、施工現場での実務経験も持つ要員を糾合、あらかじめデジタルで設計施工し、各種シミュレーションまで行う。

 連載第88回「海外のBIM事情・3」では、米国のヘルスケア系デベロッパーが「大部屋」に関係者を糾合していたし、第138回「現場作業事務所でのBIM運用・3」では、竹中工務店が現場でのBIM統合のキーマンとして施工図担当を任命していた。ともに目指しているのはデジタルによる設計と施工の統合であり、究極のフロントローディングの実践だ。

 デジタルはやすやす組織の壁を超えていく。「BIM-FM PLATFORM」は、「創る」=設計+「建てる」=施工から「管理する」=FMに至る業際を超え、「経営する」=PMによって「建物の価値は見える化され、正しい投資判断へ。ひるがえって、正しい事業計画への活用が可能となる。」へとワークフローを革新する。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週火・木曜日掲載)

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