BIMのその先を目指して・37/樋口一希/住まいをトータルでIoT連携

2018年1月25日 トップニュース

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 AI、IoTと喧しい中、建築生産の外縁に位置する建材メーカーの独自の開発コンセプトに基づく新たな挑戦がスタートした。LIXILでは、家電やデジタル機器だけではなく、玄関ドアや窓シャッターなどの建材までIoT技術でトータルにつなげる住まいのリンクシステムを開発し、18年4月から市場提供する予定だ。

 □建材のIoTへの応用を設計BIM、施工BIM、FM BIMと極めて高い親和性を持つとの文脈で捉える□

 銀行機能は残るが銀行はなくなるかもしれないとの衝撃とともに語られるフィンテック(Financial Technology)。コンビニはスマホによる無人決済店舗の導入を加速化する。同様の動きは、物流業界での人手不足解消のため脚光を集めているロジテック(Logistics Technology)、人工知能(AI)など最先端技術を使って採用・育成・評価・配置などの人事関連業務を行うHRテック(Human Resource Technology)へと広がりを見せている。LIXILの挑戦は、既存の技術とITを組み合わせてアーキテック(Architectural Technology)ともいえる応用領域創出に結びつく可能性がある。アーキテックは「創る」=設計BIM、「建てる」=施工BIM、「管理する」=FM BIMと極めて高い親和性を持つとの文脈で捉えるとわかりやすい。

 □「ホームコントローラ」と「リンクコントローラ」を独自技術で融合し住まいをトータルでIoT連携□

 LIXILでは、「住まいのIoT」に関する実証実験施設※での研究を通じて「これからの快適な住生活」についての知見やノウハウを蓄積してきた。リンクシステムは、建材、住宅設備機器などを操作・連携させる「ホームコントローラ」と各種センサーやカメラ、AIスピーカーなどを操作・連携させる「リンクコントローラ」を独自技術で融合させ、住まいをトータルでIoT連携させる。
 これによって住宅内のさまざまな操作機器と各種センサーが連携し、AIスピーカーやスマートフォンアプリによる一括管理・コントロール、何気なく操作している玄関ドアの開閉など建材の挙動とエアコンや照明を自動で連動させることが可能となり、快適な住生活の可能性を広げる。
 見守りや防犯にも効果的だ。離れて暮らす家族、外出時の子供の帰宅など玄関ドアの開閉を「きっかけ」にカメラが連動し、その映像をメールでスマホに知らせる。
 ※東京大学生産技術研究所との共同実証実験住宅(COMMAハウス)、人・モノ・家・社会が情報で結ばれた「住生活の未来」についての研究施設(U2-Home)など。

 □BIMモデルと「アシストルール機能」を組み合わせて住宅の住まい方までをフロントローディング□

 アーキテックともいえる新たな応用領域を開く可能性をもつのが極めて高い自由度をもつ「アシストルール機能」だ。何をきっかけ(トリガー)として、どのような動作(アクション)につなげるのかというルール設計をユーザーが自由に設定できる仕様となっている。これによりユーザーの生活スタイルや世帯構成など一軒一軒に合わせた機能設定が可能だ。加えて一般的な家電製品で使われる赤外線式のリモコンも組み合わせることで、暮らし方に合わせた機能を自由にカスタマイズできる。
 設計段階でのBIMモデルと「アシストルール機能」によってあらかじめ目的に応じてプログラムされた建材群を連携させることで、個々の住まい方までをフロントローディングできるはずだ。BIM(Building Information Modeling)×AI(Architectural Information)ともいえる拡張領域も視野に入ってくる。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)