BIMのその先を目指して

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BIMのその先を目指して・38/樋口一希/設計図書の電磁的記録と長期保存  [2018年2月1日]

ガイドラインの対象範囲(建築士法に関する部分)

 あらゆる情報はデジタル化できるし、デジタル化される。BIMが内包するI=Informationの重要性が高まり、もうひとつのAIとしての建築的な情報=Architectural Informationをいかに運用するかが問われている。
 日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)ガイドライン検討会が国土交通省の協力の下、17年12月18日に公開した「建築設計業務における設計図書の電磁的記録による作成と長期保存のガイドライン」について概説する。

 □ストレージ資産が潤沢となり情報を上書きでなく時系列で逐次的に保存できビッグデータ運用も□

 30数年になるデジタル機器との付き合いの中で、記憶媒体をとってもフロッピー・ディスクの8インチ、5・25インチ、3・5インチからLD、MD、CDへと大きく様変わりした。個人でもTB(テラバイト)単位のハードディスクが安価に入手できるし、直近ではネット上のクラウド・サービスが主流となりつつある。各種ストレージの大容量化、高速化、低価格化はとどまるところを知らない。
 ストレージ資産が限定的であった段階では主にバックアップのため旧情報を最新情報で上書きしていたが、資産が潤沢となったことで、情報を上書きではなく、時系列で逐次的に保存できるようになった。このように順を追って記憶された情報こそがビッグデータとなり、AIへの基底となる。1年で情報を消去すると公言した行政組織がいかに時代錯誤的なのかは明らかだ。

 □設計図書の電磁的記録を建築士法の定めにより15年間保存する場合の法的な根拠と方法を解説□

 建築分野においても、記憶媒体が様変わりする中で、2次元CADによる図面のデジタル情報をいかに延命させるかの課題は潜在している。そんな状況下、建築のデジタル情報=「設計図書」の運用・保存の直近の指針として公開された。
 ガイドラインは、設計図書を電磁的記録(電子データ)として作成、建築士法の定めにより15年間、保存する場合の法的な根拠と方法について解説している。書面の設計図書をスキャニングして電磁的記録として保存する場合の法的な根拠と方法も解説、電子化による業務プロセス改善やコスト削減にとどまらず、長期に安定的な電子的運用を実現するための助言も行っている。加えて建築士法上の保存対象図書には、設計図書と共に工事監理報告書も含まれることからガイドラインの対象として取り上げている。

 □現時点でのCADデータの長期見読性の確保はICBA(建築行政情報センター)のガイドライン引用□

 ガイドラインは誰でもネットからダウンロードして閲覧できる。A4版PDFファイル全59ページの中から前述した「図面のデジタル情報をいかに延命させるか」の観点で概説する。具体的には、▽7「電磁的記録の一般的な形式(フォーマット)の1」長期見読性、▽8「本ガイドラインでの推奨ファイル形式(フォーマット)の1」図面類、において網羅的に記述されている。
 CADデータの長期見読性については、メーカーが独自にフォーマットを決めており、アップデートも繰り返されることから長期保存の電磁的記録形式(フォーマット)としては適さない。JISやISOなどの標準規格で定められた形式や業界で長期間使用されている電磁的記録の形式(フォーマット)を採用する必要があるとしており、ICBA(建築行政情報センター)のガイドラインにある「現時点では(中略)電子署名データをファイル自身の中に格納できることや関係者の閲覧・署名検証の容易性などの観点で優位性のあるPDF形式が望ましい」を引用している。
 CADで図面類を電磁的記録で直接作成する場合の項目では、さらに追加して、拡大表示しても端末の能力に合わせた表示ができ、拡大してもジャギーが発生しないことや、ファイルサイズが比較的小さいことなどから、ベクター形式で構成されたISO 32000-2準拠のPDFとすること。CADデータ(DWG、DXF、JWWなど)を直接読み取ってPDFを作成するソフトウエアやクラウド変換サービスを利用する場合も同様のPDF仕様とすること。
 大規模物件で多数の建築士が複雑に分担して設計図書を作成する際の電子署名の検討に多くが割かれており、拝読に値する。一方でBIMへの対応など課題も散見できる。今後は建築のデジタル化の実務担当との協働で、ガイドラインが進化するのを期待したい。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)

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