BIMの課題と可能性・146/樋口一希/小規模組織のBIM運用・3

2017年2月2日 トップニュース

文字サイズ

 コミュニティ・ハウジング主宰のホアン・パブロ・オルドネス(Juan Ordonez)氏が進めるコロンビアでの改修設計の事例などを通して、設計者がBIM運用によって技術の射程距離を伸延し、建築主に質の高いサービスを提供し得るのかを検証する。


 □BIMモデル連動の解析モジュールでエネルギーの専門家に匹敵する精度で熱貫流率を計算□


 資源エネルギー庁「エネルギー基本計画」に「住宅について(中略)ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の実現を目指す」とあり、補助金制度もあることからZEH(ゼッチ)が喧しい。BIMソフトによるZEH対応住宅の設計については次回に譲るとして、本稿ではコロンビアでの改修設計におけるBIMソフトを用いたエコロジー対策について報告する。

 オルドネス氏が英語版「Vectorworks 2017」の AECメニュー>Energosを起動すると、壁スタイル=「構成要素」「厚み」「上端」「下端」「λ値(熱伝導率)」「α値(熱抵抗値)」などの諸条件がパターンとして設定されたエネルギー解析モジュールがリストアップ表示された。BIMモデルから壁面積などを参照し、そのエネルギー解析モジュールが該当する壁の熱貫流率を計算する。計算方式は、欧州のエネルギー基準に対応しており、詳細は複数の壁パターンの事例とともにカタログ誌「Passivhaus-Bauteilkatalog」にも網羅されている。

 「解析モジュールを用いることで、設計者はエネルギーの専門家に匹敵するノウハウを手に入れる。BIMモデルを利活用することで、建築の射程を伸ばし、建築主に質の高いサービスを提供できる」(オルドネス氏)


 □温度・湿度・露点データを収集する「Data Logger」を輸入して建築版簡易IoTの実験開始□


 スマホ連動型コーヒーマシンが話題となるなど、IoT(Internet of Things)は業界を越えた広がりを見せているが、建築分野では、すでに地震時の建物の挙動把握や室内環境のセンシングなどにIoT的な技術は使われている。

 英国のLascar Electronics社製「Data Logger」は、室内に設置することで自動的に温度、湿度、露点のデータを収集し、USBメモリに蓄積していく。パソコンにUSBメモリを差し込めば、蓄積されたデータを専用ソフトウエアで確認できる。本事例では、1階廊下と2階リビングに設置し、合計データポイント数1万6382のデータを収集した。画面には、刻々と変化する温度などの数値が表示されていた。

 「価格も5000円程度と安価で、ネット経由で輸入できるので複数台購入し、ある建物で実験を進めている」(オルドネス氏)

 IoTの分野で語られる概念「Digital Twin」。リアルな世界をバーチャルな世界で再現する。リアルとバーチャルをIoTを介して通信するわけだ。本事例のようなBIM運用との関連では、バーチャルな世界でのシミュレーションを、リアルな世界(建物)で実利的に再検証するということになろう。建築分野のIoTを支えるインフラとしてのBIMとの関連を今後も探索していく。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週火・木曜日掲載)