電気設備工事大手5社(きんでん、関電工、九電工、トーエネック、ユアテック)の2025年3月期決算が28日に出そろった。連結ベースでは全社が増収増益を達成。さらに売上高、営業利益、経常利益で過去最高を更新するなど歴史的な好決算となった。24年4月の時間外労働上限規制の適用以降で初の本決算だったが、各社は順調に工事量を消化し、堅調な建設投資に応えた。26年3月期も施工体制とのバランスを勘案しながら、今期を上回る好業績を目指す。
連結ベースの売上高は全社が増収。いずれも一般電気工事で都市再開発や物流施設、半導体工場、データセンター(DC)、再エネ発電施設などの新築工事に加え、バブル期のビル改修など活発な民間需要がけん引した。「現場作業の分業によるバックオフィス化」(関電工など)といった生産性向上策が実を結んだ。
本業のもうけを示す営業利益も全社が増加。労務・資材費の上昇に対する顧客側の理解も広がり、価格への反映が進んだ。ユアテックやトーエネックは、原価管理の徹底による工事採算性の向上などが寄与した。
業績の先行指標となる単体受注高は、ユアテックを除く4社が増加。きんでんは教育施設や文化施設、工場など一般得意先の需要を取り込んだ。九電工は「営業・技術の連携を徹底し、要員配置を踏まえた計画的な受注活動」が奏功した。
26年3月期連結業績予想は、全社が増収増益を掲げる。各社は米国の通商施策に伴う国内製造業への影響を注視する一方、豊富な手持ち工事を抱えており、業績にすぐに影響が出るとの見方は薄い。
各社は工事を着実にこなすため、「引き続き若手技術者の採用を積極的に進める」(きんでん)、「大型案件では支店幹部クラスを現場に派遣するなど総動員体制」(関電工)などの取り組みを進める。将来的な人口減少を見据えて人材を確保しつつ、引き続き高い生産性を維持できるかが肝要になる。