防災に関する63学協会でつくる防災学術連携体(渦岡良介代表幹事、米田雅子代表幹事)は4月30日、「防災庁への期待 災害応急対応力をどう強化するか」と題したシンポジウムをオンラインで開いた=写真。政府が2026年度の設置を目指す「防災庁」について期待や課題を議論。省庁や分野の垣根を越えた連携や、強力な司令塔とコーディネートの機能を求める意見が出た。「設置するだけではだめで、基礎自治体の根本的な防災強化が必要」という指摘もあった。
冒頭、高橋謙司内閣府防災担当政策統括官は防災庁について「政府の企画立案機能の飛躍的向上と“本気の事前防災”に取り組む司令塔機能を担う組織」と述べた。石破茂首相の指示で6月をめどに組織の大枠を示す考えを示した。
防災学術連携体の池内幸司副代表幹事は基調講演で、「今こそ学術界に求められる役割は大きい。多様な学問の知を結集し、実践的で説得力ある政策提言が求められる」と指摘。「学術界がどう貢献ができるのかを議論、提案していきたい」と述べた。
シンポジウムは▽応急対応の課題と対策▽地震、火山、火災、複合災害への備え▽科学技術の活用▽災害対応力強化に必要な体制▽防災の重要な視点-の五つのセッションで各分野の専門家が登壇した。
意見交換も行った。有識者から「初動対応は自衛隊や消防だけでなく、地域建設業も重要な役割を果たす。地域建設業との平時からの連携が重要」といった意見が出た。「事前防災にも司令塔機能は必要。本気になればなるほど防災オンリーではなく『総合地域政策』になる。構想力とかじ取りを期待したい」との提案もあった。「日本の防災対応で最大の課題は基礎自治体の防災対応力の脆弱(ぜいじゃく)性」との指摘もあり、米国の防災庁に相当する連邦緊急事態管理局(FEMA)のように地方自治体支援を強力に進めるよう求める声も上がった。
最後に政府の防災庁設置準備アドバイザー会議で主査を務める福和伸夫名古屋大学名誉教授が総括発表し「一番大事なことは、大規模災害による国難を回避すること。『本気の事前防災』に取り組むため組織、地域、時間を超えた総力を結集することが必要だ」と締めくくった。