建コン協/仙台市でインフラ整備70年講演会開く、地域と共に築いたダムから学ぶ

2025年5月12日 行事 [6面]

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 建設コンサルタンツ協会(建コン協)本部・東北支部は8日、仙台市青葉区の日立システムズホール仙台で「インフラ整備70年講演会(第59回)~戦後の代表的な100プロジェクト~」を開いた。テーマは「近代治水の発展に、地域と共に歩んだ北上川五大ダム」。平山健一元岩手大学学長名誉教授らが登壇し、ダム建設の経緯や受け継がれ進化してきた建設技術などを紹介した=写真。
 講演会には約455人が参加したほか、ウェブで約1000人が聴講した。開会に先立ち、田澤光治建コン協東北支部長が「地方での講演会開催は福岡、名古屋に続き、3回目となる。近代治水の計画の礎となった北上川五大ダムは、ダム技術の発展やダム事業の推進につながっているプロジェクト。皆さんにとって実り多い講演会となることを祈念する」とあいさつした。
 テーマの北上川五大ダムは、田瀬ダム(1941年着工、54年竣工)、石淵ダム(46年着工、53年竣工)、湯田ダム(57年着工、64年竣工)、四十四田ダム(62年着工、68年竣工)、御所ダム(69年着工、81年竣工)と石淵ダム再開発となる胆沢ダム(88年着工、2013年竣工)完成まで72年間に及ぶ国家プロジェクト。日本初の大河川による多目的ダム群として戦時下に着手し、戦後の激動する時代を乗り越え、現在のダム建設に関連する法制度や地域との合意形成に大きな影響を与えた。
 講演会では、平山名誉教授が、多くの課題や対立を乗り越えダム建設の目的を実現した経緯を紹介。「五大ダム建設は地域とともに歩んだ公共事業といえる。流域には、ともに助け合う風土があった」と強調。「多目的ダムの先駆けとなった五大ダムプロジェクトは一関遊水池事業の完成で間もなく一つの区切りを迎える。気候変動を踏まえ機能強化や水源地域の交流拠点として期待はますます膨らむ」と語った。
 佐藤伸吾元東北地方整備局北上川ダム統合管理事務所長は移転補償の仕組みが整っていない中で建設を進めた田瀬ダム、石淵ダム建設を経て「国内最大規模の水没補償となった湯田ダムでの合意形成の在り方や御所ダムが水源地域対策特別措置法制定の先例になった」と報告した。
 続いて、鹿島の松本孝矢前成瀬ダム堤体打設JV工事事務所長が石淵ダム再開発として施工した胆沢ダム建設で活用した情報化施工が「改良や工夫、日々進化する技術を融合させ成瀬ダムの自動化施工につながっている」と説明した。その上で「先輩技術者に学び、その志を受け継ぎ、さらに高効率な建設生産システムを進化させながら建設技術、工事を牽引していくがわれわれ技術者に課せられた使命だ」と力を込めた。
 講演会のコーディネーターを務めた渥美雅裕元胆沢ダム工事事務所長は「五大ダム建設を通じて得た知見と教訓が近代治水の法制度の整備や建設技術の向上に貢献している。老朽化や豪雨への対応など山積する課題解決に向け、土木の未来に期待したい」締めくくった。最後に流域住民の声がビデオメッセージで放映され「当時のさまざまな思いがあってダム建設が実現したと聞いているが、今のこの素晴らしい景色が地域の宝になっている」と五大ダムの効果を伝えた。
 会場には東北地域づくり協会による「北上川五大ダム写真展」も催され、工事写真や水没した地域の風景などを収めた200枚を超えるパネルを展示した。