建設キャリアアップシステム(CCUS)運営主体の建設業振興基金(振興基金、谷脇暁理事長)は、公共発注のCCUSモデル工事を対象に、能力評価(レベル判定)に有効な就業履歴を蓄積できる適正な現場運用を徹底的にサポートする取り組みに注力する。受注者に運用方法を手ほどきしながら、発注者にも運用のポイントなどを説明。受発注者の相互理解を醸成し、モデル工事の効率的な履行確認につなげる。好事例の成果を見学会で周知し、地域内の元請各社や専門工事会社、ほかの発注機関にも水平展開する。
国土交通省直轄や地方自治体発注のモデル工事を受注した、あるいは受注を目指す元請個社から申し込みを受け、振興基金が現場運用を直接サポートする。「施工体制登録」や「施工体制技能者(作業員名簿)登録」など準備段階から適正な運用方法をマスターしてもらう。2024年度以降は従来以上に発注者を巻き込んだ形で展開。CCUSの運用実態に触れる機会が少なかった発注者にも、説明会や見学会を通じ適正運用への理解を促す。
モデル工事では定期的に設定した計測日に、事業者・技能者登録状況や就業履歴蓄積状況を確認する。要求水準を満たした場合、工事成績評定で加点する仕組みとなる。
振興基金は、計測日のデータ抽出や書類提出で元請の負担が過大にならないよう、CCUSの機能を用いた方法などを伝授。発注者が煩雑な書類などを求めないためにも、効率的な計測方法について受発注者の相互理解の醸成に重点を置く。
振興基金の上浪鉄郎CCUS事業本部審議役は「元請は何を出し、発注者は何を見ればいいのか。互いがやるべきことを理解した上で取り組むことが大事」と指摘する。元請には施工体制台帳や建設業退職金共済(建退共)とのデータ連携など業務効率化のメリットを実感してもらう機会にもなる。公共発注のモデル工事を取っ掛かりにCCUSの適正な運用方法を身に付け、民間工事など別工事でも積極的に活用する動きが出てくることを期待する。
サポート先は国交省直轄だけでなく、山梨、埼玉両県や新潟市といった自治体発注のモデル工事にも広がっている。自治体の規模に応じたサポート方法を今後検討する考え。発注者側の理解を促す中で、適正運用を担保するモデル工事の加点基準や実施方法への改善も後押しする。