大阪市中央区のOMMビルに入居する日本建築協会(指田孝太郎会長)の本部事務所リニューアルプロジェクトがこのほど完了した。若手設計者でつくるU-35委員会が主体的に、企画から設計、施工を手掛けた。可変的で循環型社会に貢献する木材「ノマドギ」を活用し、2004年の入居以来、変わることがなかったレイアウトを抜本的に一新。サロン機能を備え協会活動や会員交流を促す、開放的なオフィス空間が誕生した。
事務所はビル内のテナント1部屋。今回のリニューアルは、協会の特徴であるサロン性とアーカイブ性を備えたワークプレイスを構築しようと、24年3月に指田会長がU-35委員会に打診。24年度の活動テーマである「トランスフォーメーション」を体現するプロジェクトとしてスタートした。
同委員会は、大阪府茨木市の社会実験などで再利用してきたノマドギを間仕切りや本棚、会議テーブルなどに有効活用しようと企画。保管先の竹中工務店寮で数百本の部材を事務所向けサイズにカットし、塗装を行った。
設計では最初に4グループに分かれてゾーニングなどを立案。それぞれの長所を抽出し、追加案も踏まえて24年9月までに最終的な設計をまとめた。大川や中之島の景色が望める北側の窓際にカウンターや会議テーブルなどサロンスペースを設けることになった。
1月から3月にかけてキドビル工務店(大阪市平野区)の協力を得て、2工区に分けて事務所を使いながら施工を実施。委員らの手で、ノマドギの家具製作や左官作業などを行った。カーペットパネルはメーカー5社からランダムに採用し、エントランスとオフィス、サロンのゾーン別に色調を差別化した。
同委員会の大屋泰輝さん(大林組)は「各委員会の会議が気軽に事務所で開けるようになり、協会の一体感が高まった」、倉知寛之さん(日本設計)は「家具によってノマドギに使用感が見られ、これまでのプロセスが感じられる」と感想を語った。リーダーを務めた河崎菜摘さん(竹中工務店)は「委員会と工務店、メーカー、事務局で知恵を出し合い、作り上げたことに意義がある」と強調した。