中部整備局/天竜川水系流域委員会開く、佐久間ダム放流設備増設はトンネルが有力

2025年5月22日 行政・団体 [7面]

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 中部地方整備局は20日、第9回天竜川水系流域委員会(委員長・辻本哲郎名古屋大学名誉教授)を浜松市中央区の浜松河川国道事務所で開き、直轄河川改修事業や天竜川上流部の治水機能増強検討調査などの状況を報告した。このうち天竜川ダム再編事業では、増設する佐久間ダム放流設備についてトンネル放流設備とすることが有力であることを説明。本年度中に開く次回委員会で再評価する予定。
 冒頭、辻本委員長は「天竜川ダム再編は、上流と下流のつながりで重要な事業。委員会で丁寧に現状を把握する必要がある」とあいさつした。
 同事業は、佐久間ダム(右岸・愛知県豊根町、左岸・浜松市)の放流設備を新たに整備し、洪水調節容量を確保、災害の防止や軽減を目指す。
 放流設備は当初、既設のコンジットゲート改造案(洪水期の利水容量1億6760万立方メートル、洪水調節容量5400万立方メートル)を挙げていたが、発電運用への影響などを踏まえて検討を進め、トンネル放流設備への変更案(洪水期の利水容量1億9044万立方メートル、洪水調節容量5500万立方メートル)が有力と示した。構成は、トンネル部(延長400メートル、直径14・5メートル)、シュート部・減勢工部(延長146メートル)を想定する。
 恒久的な堆砂対策として貯水池に堆積した土砂の浚渫も行う。揚砂場から下流部へ土砂を輸送するために新たに整備するベルトコンベヤートンネルの規模は延長1281メートル、高さ5メートル、幅4メートルを想定する。
 本年度の取り組みとして、増設放流設備やストックヤード、管理設備、揚砂場の検討・設計、環境調査などを進める。増設放流設備の詳細は、コストや効果の早期発現など総合的に検討する。現時点の総事業費は約790億円、工期は2031年度までとしている。同ダムは重力式コンクリートダム。堤高155メートル。総貯水容量3億2685万立方メートル。
 直轄河川改修事業の説明では、長野県高森町山吹で進むMIZBEステーションなどが紹介された。築堤と併せて防災拠点を一体的に整備し、地域全体の防災力向上を図っている。中、下流部での河道掘削や堤防整備なども状況を確認した。
 上流部の治水機能増強検討調査は、本年度新たに着手する。既設の美和ダムや小渋ダムなどを最大限活用した事前放流や操作方法の見直し、治水・利水の貯水容量の再編などについて調査・検討し、必要な対策を実施。さらに増強が必要な場合は、既設ダムの放流能力の増強や堤体のかさ上げ、新設ダムなどの調査・検討を行う。