不動テトラは6月下旬、新造した浚渫・起重機船「FT400」を三河湾北西奥部、愛知県の5市3町にまたがる衣浦港の「令和6年度衣浦港外港地区防波堤撤去外工事」(国土交通省中部地方整備局発注)に初投入する。建造には約25億円を投資した。年間3~4件の工事で稼働を想定。同社は「年間受注高を9億円程度押し上げる」と投資効果を試算する。他の船でも使用できる新技術を開発することで間接的な波及効果も目指す。=1面参照
押航式のFT400の船体(台船)は全長68・5メートル、幅25メートル、深さ4・5メートルのサイズ。最大つり能力400トンのクレーンを搭載し、最大積載重量が4011トンになる。4基装備した電動スラスターの推力は2トン、蓄電システムの容量は450キロワット時。押し船兼作業船(全長14・2メートル、幅6メートル、深さ2・0メートル)で移動し、水深に応じて船体に取り付けた長さ28・5メートルのスパッド2本で船体を安定させ作業する。
環境性能の向上に貢献するハイブリッド蓄電システムは発電機を小型、少量化し、二酸化炭素(CO2)の排出量を同社の試算で約60%削減する。電動式ポンプジェットスラスターの稼働時に高まった電力負荷をアシストする仕組みがある。昼間に発生した余剰電力を蓄電して夜間や作業休止で停泊した時に利用できる。一般家庭2カ月分に匹敵する蓄電が可能で、災害発生時の陸上給電にも対応する。
省人化や生産性向上を目的に、DPS(ダイナミック・ポジショニング・システム)や航行支援ソリューションを装備しているのも特徴だ。DPSは風や潮流、波などの影響があっても船体位置を定点的に自動保持する。高精度で安定したオペレーションを実現し、作業時間の短縮や施工品質の向上、船舶の安全航行につなげる。航行支援ソリューションはAI航行支援、ICT施工支援、ICT離接舷の各システムと多彩なバケットで構成する。
船内にはキッチンや会議室、サウナ室などを整えた。働きやすい環境づくりに気を配った。船員には個室を用意。女性技術者や監督者の乗船に備え、浴室とトイレ、ドラム式洗濯乾燥機を完備した専用室も設ける。
南海トラフ地震や首都直下地震など今後予想される大規模災害が発生した場合は、航路開削などの災害対応で活躍が期待される。船倉に避難所機能を持たせた非常室を用意し、24床の簡易ベッドを設置することで避難者を受け入れる。