関東地方整備局千葉国道事務所は、千葉県の湾岸部に整備を目指す「新湾岸道路」の概略ルートと構造案をまとめた。市川、市原両市を結ぶ新設道路の全線を高架か地下構造とするバイパス整備2案、既存道路を拡幅する案の計3案提示。現時点の概算事業費を最大約2兆円と試算した。28日に東京都内で開いた「新湾岸道路有識者委員会」の第2回会合=写真上=で明らかにした。
新湾岸道路は東京外かく環状道路(外環道)高谷JCT(千葉県市川市)から、館山自動車道路(京葉道路)の蘇我IC(千葉市中央区)か市原IC(千葉県市原市)までを結ぶ高規格道路として計画する。
港湾機能の強化や物流施設の立地数の増加に伴う慢性的な交通渋滞の解消を狙い、有識者の助言を得ながら整備の可能性を探っている。昨夏開いた有識者委員会の初会合後、同事務所が新湾岸道路の整備を巡り地元に意向調査を行った。
委員会の冒頭、屋井鉄雄委員長(東京科学大学特命教授・名誉教授)は「新湾岸道路整備に対して地域から4000件を超える意見をいただいた。整備を望む意見もあれば懸念の声も寄せられた。活発な議論をお願いしたい」と述べた。
概略ルートは、自然環境(三番瀬や谷津干潟)と沿線市の市街地を避けるように千葉港~京葉臨海工業地域を結ぶバイパス案が2案。国道357号、16号などを拡幅して新路線を通す案の計3案となった。道路整備そのものを行わない案を基本ラインに、設定した評価項目に基づいて各案を比較検討する。
評価項目は「達成すべき目標(案)」として▽交通渋滞▽交通事故▽医療▽防災▽物流・産業▽港湾・空港アクセス性▽生活環境-の7項目を設定。「配慮すべきこと(案)」は▽自然環境▽景観▽居住環境▽経済性-と位置付けた。
医療では、渋滞箇所を回避できるバイパス案は短い時間で目的地に到着できる速達性が「向上する」と評価したが、既存道路を拡幅する案は速達性が「期待できない」とした。事業費を指す経済性の比較結果は、高架構造が約1兆円、地下構造は一部区間に海底トンネルを通す必要があり約2兆円と試算した。既存道路を活用した場合は約0・5兆円と他の2案に比べて低かった。
有識者からは「(評価項目の)配慮すべき事項は整理する必要がある」などの意見が寄せられた。今後は概略ルートや構造案などの検討結果を周辺住民に示し意見聴取する。