横浜市は山下公園通り周辺地区(中区)のまちづくりビジョン素案をまとめた。横浜を代表する歴史と文化を残す魅力ある街並みの更新と、未来に向けた新たな機能導入などで将来像を示している。低未利用地の利活用なども課題に挙げている。6~7月に市民の意見を募り、秋ごろにまちづくりビジョンの原案をまとめる考えだ。
5月30日の市議会建築・都市整備・道路委員会で報告した。対象範囲は横浜港大さん橋国際客船ターミナル~山下ふ頭間の山下公園通り沿いで、海側には山下公園が広がる。みなとみらい21地区や関内・関外地区、中華街、再開発を計画している山下ふ頭地区との重要な結節点であり、観光資源が充実しているエリア。歴史を感じさせるたたずまいを残す一方、1980年以前に建てられた建築物も多く、駐車場などの低未利用地もあることなどから将来に向けたまちづくりビジョンの必要性が指摘されていた。
素案では地区の将来像として「港町の歴史、美しい海や緑、新たな魅力とにぎわいが織りなす水際線のまちづくりにより、世界の人々を魅了するまち」を掲げた。その上で▽水際線の魅力を生かす▽海辺と緑の風景を連動させた新たなGREEN空間創出▽国内外から人や企業を惹きつける多彩な機能導入▽結節点としての機能強化▽環境配慮と持続可能性▽災害に強いまちづくり-の6項目を方向性に据えた。
このうち多彩な機能導入では観光・体験型施設の充実、世界水準のエンターテインメント施設、ビジネス・R&D拠点形成、質の高い滞在環境整備などを目指す。環境配慮では街区全体でエネルギーの効率化や再生可能エネルギーの利活用を図る。対象範囲が埋め立て地であることや、津波と高潮の浸水想定区域に入っていることなどから、災害に対応した都市インフラ整備や地域・企業と連携した日常からの備えなどにも言及している。
地区内にはシルクセンター、産業貿易センタービル、ホテルニューグランド、横浜合同庁舎、マリンタワー、横浜地方合同庁舎など築40年以上の建物が多く、今後更新時期を迎えていくことが想定される。歴史的建造物も多く、建物用途や形態、意匠などに法的拘束力のある基準を設け、低層部の景観確保も図ってきた。今後は横浜らしい歴史と文化を残しながら、にぎわいを創出する考えだ。