奈良県/大和西大寺駅高架化合意形成へ、政府への知事要望見送り

2025年6月2日 工事・計画 [11面]

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 奈良県は奈良市、近畿日本鉄道と検討を進めている近鉄大和西大寺駅の高架化について、今夏の政府要望の最重点要望(知事要望)を見送る方針を固めた。5月30日に山下真知事が定例会見で明らかにした。事業費約1000億円を見込み、市との協議などが難航していることが要因。会見で山下知事は「やるべき価値がある事業」と強調し、合意形成の手段として周辺まちづくりの将来を描いたイメージパースを独自に提示。今後交通シミュレーションなども行い、整備効果や意義を具体的に示していく。
 奈良市内では中心部を東西に走る線路がまちを分断しており、大和西大寺駅(西大寺国見町1)の周辺では「開かずの踏切」で慢性的な渋滞が発生している。
 3者は2021年3月に地方踏切道改良計画を作成し、同駅の高架化で踏切を除却するなどして渋滞を解消する計画を進めてきた。23年に計2回の3者協議会を開催したが、費用面の課題や渋滞対策の方法に関して県と市で意見が異なり、第3回協議会の開催には至っていない。
 高架化の概算事業費は約1000億円で、県は国と近鉄の負担分を除く約380億円を市と折半したい考え。工事完成までに20年以上が必要と見ている。山下知事は「(それだけの費用と時間をかけても)やるべき価値がある。ぜひとも前に進めていきたい」と意欲を見せた。
 県が示したまちづくりイメージでは、高架化で交通の安全性・利便性を高めるとともに、駅周辺の南北分断を解消した良好なまちづくりを描く。山下知事は既存の奈良線を南側へ、京都線を西側に少し移動させた上で、新たな県道を整備する構想なども示した。
 県は駅周辺の交通シミュレーション調査の委託先選定手続きを進めており、6月中に事業者と契約を結ぶ予定。25年度内に調査結果をまとめ、市との協議に向けた材料にしていく。
 現在、同駅西側には4カ所の改良すべき踏切があり、県が1カ所、市が3カ所を管理している。駅から最も近い「菖蒲池第8号踏切道」は遮断時間が1時間当たり最大51分で、これらを除却するためには県と市の合意形成が不可欠となる。