戸田建設が東京都中央区の本社ビル「TODA BUILDING」(戸田ビル)に設けたミュージアムを拠点に、ものづくりの楽しさを社内外に発信している。5月20~23日に開いた建築設計文化祭「キテン」で、設計に携わる社員の思いを手作りの模型で表現。ビル周辺を通りかかった人も見学し、参加してもらった。常設展示は同社の創業からの歴史や技術をプロジェクターやジオラマで体感できる。
8階のミュージアム「TODA CREATIVE LAB“TODAtte?(トダッテ)”」をメイン会場に、4回目の建築設計文化祭は開いた。前回は2016年でコロナ禍を挟んで9年ぶり。今回は戸田ビルの完成を機に、初めて本社を会場とした。
キーワードの「キテン」には「機転」「嬉転」「己唸」「輝点」といった言葉を掛けたほか、社員がさまざまな当て字を考案。トダッテに設置した紙ストローを組み合わせてつくった土台「トラスウォール」のところどころに、それぞれのキテンを表現した正四面体の「キテンピース」を設置した。
本社で設計に携わる480人の社員が、食べ物や趣味など遊び心のあるピースも交え、思いを表現した。合計17面のトラスウォールをあんどんの光でゆるやかに照らすなど、展示内容にひかれるような工夫も各所に施した。1階には、トラスウォールに社員や通りがかりの人が紙ストローを継ぎ足していく「アイキャッチパネル」を置いた。
建築設計文化祭の小林亮太実行委員長は「戸田建設のブランドスローガンである『Build the Culture.人がつくる。人でつくる。』を実現するため、AIではできないようなことを手作りのトラスウォールで表現した」と説く。昨年11月に作業を始め、「若手から管理職までが意見をぶつけ合ってきた。本音を言うとあと2、3カ月の猶予があれば良かった」と話し、次回の開催を見据える。
トダッテは▽企業文化と継承▽知恵と技術▽未来を考える-の3ゾーンで構成する。企業文化と継承ゾーンは、包括連携協定を結ぶ北海道下川町の木材でつくった展示板で囲んだ空間。創業者・戸田利兵衛が前身となる戸田方を興した創成期から成長期、成熟期、転換期と順を追って紹介している。
展示の片隅にある小さな扉「トダのトビラ」を開けると、戸田建設が手掛けたさまざまな案件の豆知識にたどり着ける。成長期のトダのトビラでは関東大震災で鎌倉大仏の台座前面が破損した時、前身の戸田組が修繕工事を行ったと解説。扉の裏は大仏の胎内にある銘板のレプリカとなっている。
知恵と技術ゾーンは、戸田ビルや医療施設といった建物の施工実績をLEDダイナミックビジョンに投影して紹介。2、3分のイントロダクション映像とともに、建物上空を飛んでいるような臨場感が味わえる。
未来を考えるゾーンは360度の円筒シアターで、50年の戸田建設の未来像を表現している。体験コーナーも設けた。工事で発生する騒音に同じ周波数の音をぶつけて打ち消す装置や、コンクリート板を並べた木琴など、同社の技術を身近に感じられるようになっている。
「(文化祭の)裏テーマは、戸田ビルをどう活用するかを社内外の人に考えてもらうこと」と小林氏。戸田ビルのコンセプトは「人と街をつなぐ」。設計以外の部門の社員や、京橋地域を行き交う人たちを巻き込んだビルの将来像を模索していく。