鹿島/技研実験場(東京都調布市)に止水壁設置/グループ技術生かし水災害対策加速

2025年6月12日 企業・経営 [3面]

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 鹿島はグループの保有技術を水害対策に生かす「水災害トータルエンジニアリングサービス」の一環で、東京都調布市にある自社の技術研究所西調布実験場で対策工事を実施した。将来的な洪水を予測し、敷地の外周約600メートルを1・5メートルの止水壁で取り囲んだ。高額な実験機器を設置している実験棟への浸水を防ぎ、BCP(事業継続計画)を強化する。今後は対策工事や運用段階で知見を集め、サービスの拡充と普及につなげる。
 西調布実験場は多摩川に近く、洪水発生時の浸水想定区域にある。気候変動による降雨量の増加リスクが高まる中で、早期の対策が課題だった。2023年7月から水災害トータルエンジニアリングサービスを活用し、本格的な防災対策に着手した。
 対策工事では気候変動による将来的な降雨量の増加を踏まえ、洪水氾濫の解析を実施。設計浸水深を洪水ハザードマップの約3倍となる約1・5メートルに設定した。敷地外周を止水ラインとし、大型で高額な実験機器を設置した複数の実験棟を守る計画にした。
 止水壁の一部には、圧迫感を減らすガラススクリーンを採用。自社が開発に携わった二酸化炭素(CO2)の吸収コンクリート「CO2-SUICOM」も取り入れた。敷地の出入り口には、浸水が発生した場合に自動的に立ち上がる「浮上起伏式止水板」を設置した。
 自社の特許技術も活用した。止水板が立ち上がった後も敷地内外を移動できる浸水時避難口や、排水管からの逆流を防ぐ二重逆流防止弁を設けた。
 鹿島は22年10月から水災害トータルエンジニアリングサービスの提供を開始した。顧客のニーズに応じ、リスク評価から対策立案、対策工事、運用支援まで一貫した水害対策を提供する。気候変動で水災害が激甚化する中で、高まる防災需要の取り込みを目指す。