スコープ/東京都が東京ベイeSGプロジェクト、アップデートし世界のモデル都市へ

2025年6月24日 工事・計画 [12面]

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 東京都が「東京ベイeSGプロジェクト」を加速させている。東京湾にある臨海副都心と中央防波堤エリアを舞台にしたプロジェクトで、社会の構造改革を推し進めることを目的に、最先端技術の実装に向けた実験などを展開。今後はアップデートした同プロジェクトで掲げた環境やDX、まちづくりなどの戦略を推進し、新たな価値を生み続ける世界のモデル都市を目指す。
 東京ベイeSGプロジェクトは50年、100年先を見据え、「自然」と「便利」が融合する持続可能な都市をつくり上げることを目的に構想した。持続可能な社会の実践に努めた渋沢栄一や、1923年の関東大震災後、復興に当たり未来に住む人々を見据えた都市づくりを進めた後藤新平など偉大な先人たちの精神を受け継いでいる。
 都が東京ベイeSGプロジェクトを策定したのは2021年4月。新型コロナウイルスという大きな危機を乗り越えた50年、100年先を見据えた都市のあるべき姿を描いた。
 プロジェクトの拠点としてベイエリアを選んだのはそのポテンシャルの高さだ。臨海副都心には商業機能、エンターテインメント施設など多様な魅力を持つエリアが広がっている。隣接する中央防波堤は将来的に約1000ヘクタールの広大な土地になる予定で、最先端技術の大規模な実証実験が可能だ。
 最先端技術の実装に向けては、これまで先行プロジェクトを実施。都が「次世代モビリティ」「最先端再生可能エネルギー」「環境改善・資源循環」の三つのテーマで民間事業者などを公募し、実装に向けた伴走支援を展開してきた。
 技術開発が活発な「自動運転」に関しては、特定の条件下で完全自動運転が可能な「レベル4」の早期実装に向け、ベイエリアを推進区域に設定。社会の受容性向上に向けた取り組みを支援している。「空飛ぶクルマ」は24年に都内で初飛行を成功させ、開発の加速につなげている。
 3月に公表した「東京ベイeSGプロジェクト(バージョン2・0)」では、これまでの成果を発展させて社会実装を一層進めるため▽環境・GX▽DX・テクノロジー▽共創・仲間づくり▽まちづくり-の四つの新たな戦略を立てた。これら戦略の下、50年代の目指すべきベイエリアの姿と、35年までの具体的な取り組みを示している。
 環境・GXでは、50年代に再エネでエネルギーの地産地消を実現するとともに、自然の再生と経済の発展が調和した都市を目指している。そのため、35年までにベイエリアでグリーン水素の製造と供給体制を構築。次世代ソーラーセルや舗装式太陽光発電をはじめとした最先端再エネを街中に普及させる。水辺でのグリーン・ブルーインフラの整備などにより生物多様性を保全する。
 DX・テクノロジーは、50年代に知性を備えたさまざまなデジタル技術がまちに実装されている姿や、ロボット、モビリティによる快適な都市生活の実現などを描いている。35年までには、ロボットなど新技術の実装を先導する巨大実装エリアを創出。宇宙・海洋フロンティア開発、DXインフラなど新たなイノベーションを生み出す仕組みを検討する。空飛ぶクルマや自動運転車に加え、場面や個人の特性に応じたパーソナルモビリティの導入も促進する。
 まちづくり関連では50年代には充実した交通ネットワークを備えるとともに、世界有数の芸術文化、スポーツなどの発信地になることを目指す。前段階に当たる35年までには東京駅と臨海地域を結ぶ都心部・臨海地域地下鉄など交通網の拡充に向けた取り組みを推進。コンテナ埠頭の整備・再編やAIなどのデジタル技術により港湾物流を効率化する。頻発する集中豪雨や、高い確率での発生が予想される首都直下地震などの自然災害に強い都市を実現する。
 都は今後、臨海副都心や中央防波堤エリアでの取り組みを発展させる。ベイエリアから東京全体、さらには日本全体に波及させ、持続可能な都市モデルとして世界に発信する考えだ。