日建連・意見交換会を振り返る・下/若手育成へ、監理技術者制度の運用面で課題

2025年6月25日 行政・団体 [1面]

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 過去の工事実績を有する監理技術者は40~50代に集中していて、将来のためにも若手育成が急務だ。日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)はこう危機感を持つ。2024年秋に行った土木技術者の離職状況に関するアンケートによると、22年の土木系技術者の平均離職率は20~30歳が6・7%と年代別で最も高く、前回調査(17年)から1・9ポイント上昇した。離職理由(複数回答可)は「転勤・異動」が67%と最も高い割合を占めた。
 頻繁に転勤が生じる一因が、入札での配置予定技術者の参加資格要件だ。土木工事は入札時、配置予定技術者の評価によって総合評価での獲得点が左右されやすく、監理技術者を固定化する傾向にある。また現行の制度運用では、よほどの事情がない限り監理技術者の交代が認められない。
 このため若手が実績を積みにくく、転勤する技術者も若手に偏ってしまう。若手育成を支援する専任補助者制度などの試行工事は、整備局ごとにルールが異なるため、長期的な視野での現場配置や育成が困難となっている。日建連は「途中交代や手続きの簡素化などの運用緩和によって、離職防止や担い手確保にもつながる」と訴えた。
 近畿整備局は若手技術者が途中交代できる「監理技術者育成交代モデル工事」を試行。モデル工事の拡大に取り組む姿勢を示した。東北整備局は若手技術者を配置しやすくするため、25年度から本官工事の評価項目のうち配置予定技術者の同種工事の実績を役職、立場で評価しないとした。
 中国整備局は「新規採用や若手技術者の育成、定着は受発注者共通の課題だ」と認識する。中部整備局は官民が連携してインターンシップを行い、四国整備局ではSNSを駆使したPRなどを展開。九州整備局は「担い手の確保や若手技術者の育成、定着などにつながる取り組みを積極的に行いたい」と意欲を見せた。
 若手や一般の人などに「建設業は変わった」と思ってもらうには、先進的な施策や柔軟な制度運用を取り入れた一部の工事ではなく、すべての現場が統一したルールを適用しレベル感を合わせることが重要だ。意見交換会を通じた制度や仕組みの不断の改善は「地道な取り組みだが、最終的にボディーブローのように効いてくる」(風間優公共工事委員長)。
 押味至一副会長土木本部長は「公共工事の先進的な取り組みは民間工事に対しても広く展開されるべき」と訴える。受発注者が足並みをそろえ効果的な取り組みを広く展開することが、建設業界全体の健全な発展につながるだろう。=おわり
 (編集部・野中駿太)