大阪・関西万博のシンボル「大屋根リング」の閉幕後の活用について、2025年日本国際博覧会協会(十倉雅和会長)は23日の理事会で、北東部の約200メートルと南西部の約350メートルを除き、部材の再利用(リユース)に向けた解体の準備に入るとした。大阪府、大阪市など会場建設費を拠出する行政や経済界、協会からなる「大屋根リングの活用に関する検討会」の見解を踏まえた対応となる。
大屋根リングは万博会場全体を一周する全長約2キロの木造構造物で「多様でありながら、ひとつ」という会場デザイン理念を象徴している。理事会では北東部と南西部の一部残置を前提に、それ以外の部分の再利用需要に応じた丁寧な解体を進めるべく契約を変更するとした。
再利用に向けては万博協会で既に第1期公募分として約700立方メートルを確保しており、第2期(7月中旬に公募開始)でさらに1000~1500立方メートルの最大2200立方メートルを見込む。全体の構造材は約2万7000立方メートルとされ、現時点で確保済み・見込み量は全体の8・1%にとどまる。未利用材はチップ化してリサイクルする方針。
検討会では北東部200メートルは今後募集する夢洲第2期区域の開発事業者の提案次第で活用が見送られる可能性もあるため、南西部350メートル(第3期区域)を代替的にレガシー(遺産)として残す案が提示された。
残置に際しては三つの法的位置付けが整理され、中でも建築基準法に基づく準用工作物(物見塔)とする案が現実的選択肢として有力だ。商用利用はできないが防耐火基準の適用がなく、比較的低コストで人が登れる構造を維持できる。
理事会では残置部の法的位置付けのほか、管理主体、財源スキームを確定するため、次回理事会(9月末~10月上旬)までに検討会で整理するスケジュール案を共有。夢洲のまちづくりと調和する万博レガシーの形成に向け、関係者間で調整が続く。
十倉会長は「万博の理念は分断と対立の時代における“多様でありながら、ひとつ”というメッセージだ」と述べ、象徴的建築の継承に強い意欲を示した=写真。