大阪建設業協会(大建協)土木委員会(大西康之委員長)は、2024年11月に行った土木工事現場勤務実態調査(第5回)の報告書をまとめ、23日に発表した。時間外労働上限規制の適用以降、初めての調査となり、前回(22年11月)に比べて月平均総労働時間、休日取得数ともに大幅に改善した。平均総労働時間は189・5時間(前回205・4時間)で7・7%減少。協会が定めた目標値205時間(所定労働時間+時間外労働時間上限45時間)を初めて下回った。休日数は1日増加の9・6日だった。
調査は長時間労働の原因や背景を把握し改善に生かす目的で17年に初めて行った。今回は近畿圏の土木技術者を対象に外勤、内勤の全12業務の労働時間比率と意識調査を実施。計197工事から29社、574人が回答(有効回答数569人)した。
回答者の平均総労働時間は189・5時間。22年に比べ15・9時間減、17年比では60・5時間の減となった。平均残業時間帯割合も変化し、0~45時間の時間外労働は80・8%(22年48・6%)まで増加。45~100時間は前回48・9%に対して18・5%まで減少した。
45時間を超過した現場では現場管理業務や発注者提出書類、設計変更協議資料の作成に費やす時間が多くなっている。年代別では業務の中心的世代の20~30代で労働時間が多くなる傾向はあるが、いずれも200時間を下回った。休日の取得割合は8日以上が92・1%に達し、3日以下の取得者はいなかった。
近畿地方整備局や西日本高速道路会社、大阪府など主要発注機関別の現場を見ても総労働時間は200時間を下回り、休日取得数を含め前回調査から改善。全産業で働き方改革が進む中、会員各社、個人の意識改革や生産性向上対策などに加え、適正な工期設定や工事関係書類の簡素化など、発注者側の対応も相まって改善が進んだとみられる。
土木技術者の意識調査ではワーク・ライフ・バランスについて6割以上が「充実している」と回答。上限規制の適用に関しては「何も変わらない」が23%で最多だった。「気持ちにゆとりができた」(16・6%)や「娯楽や家族の時間が増えた」(8・2%)と良い影響を実感している一方、「精神的疲労が増えた」(14・8%)や「仕事を持ち帰ることが増えた」(8・9%)などマイナスの回答もあった。現場で最も困っている点として「人手不足・若手育成」が最多の約28%を占め、限られた時間の中で対応に苦慮している現状が浮き彫りになった。
同日、大阪市内で会見した大西委員長は「受発注者双方で労働環境改善に向けた動きが本格化しており、時間外労働上限規制の効果が顕在化しつつある。ただ、人員不足や若手の育成、業務の偏りといった課題も顕在化している。発注行政機関との意見交換などを通じて情報を共有し、さらなる改善に取り組んでいきたい」と話した。