関電工社会インフラ統轄本部が、福島県いわき市と広野町にまたがる阿武隈高地の一帯で「あぶくま南風力発電所」の建設を進めている。標高約600~830メートルに広がる国有林に道を通し、全長136・5メートルのゼネラル・エレクトリック(GE)ベノルバ製の風車28基(定格総出力89・2メガワット)や各種電力線など一式の整備を元請として担う。12月に予定する最初の風車受電に向け、現場では基礎の築造がヤマ場を迎えている。
◇阿武隈高地に風車28基など
工事は山林を切り開き、輸送ルートとなる市道小川高部線を拡幅するなど道路・風車ヤードの造成から始まった。施工内容は風車の調達・輸送・据え付け、変電所の建設、66キロボルト自営線工事約12・3キロメートル(地中2回線)、33キロボルト集電線工事約22・1キロメートル(地中4回線)、風車内電気工事と多岐にわたる。風車は発電事業者が調達する場合が多く、関電工では「これだけ大規模な風車調達は初めて」(担当者)という。
工期は2023年9月~27年6月。全体の進捗率は今年5月末時点で21・6%。風車のうち17基の受電を25年12月、その他の風車の受電を26年8月に計画する。
風車基礎の構築は昨年9月に着手し、5月までに28基中10基が完了した。打設するコンクリート量は1基当たり約770立方メートルと生コン車約150台分に及ぶ。打設作業は午前6時から午後10時までの長丁場になることもあり、工程・品質管理には一段と気を使う。
5月下旬には主要な資材搬入ルートである国道399号が、のり面崩落で約1カ月間、通行止めとなる事態に見舞われた。迂回(うかい)路の県道41号は幅員が狭く大型車両のすれ違いが難しいため、安全確保のため工程の遅れが見込まれた。幸い21日に応急復旧によって片側交互通行が可能になり、工期には影響しない見込みだ。土木担当者は「土質が良く工事はしやすい。残る基礎も淡々と正確に工事を進めたい」と意気込みを新たにする。
同発電所の建設は、福島県が再生可能エネルギー推進ビジョンに基づき17年に公募した阿武隈地域風力発電事業の一環。コスモエネルギーグループのコスモエコパワー(東京都品川区、野倉史章社長)ら4社によるSPC(特定目的会社)「あぶくま南風力発電」(いわき市)が発注した。関電工は計画段階から営業活動を展開し、基本・詳細設計の受託を経て23年8月にEPC(設計・調達・建設)契約を結んだ。