フランスでは1年間に2週間の有給休暇を連続して取得することが「バカンス法」で保障されている。都会の喧噪(けんそう)を忘れ、観光地で家族と余暇を過ごすのも立派な業務の一環なのだそう▼従業員をいかに休ませるか。フランスではこれが仕事の最優先に置かれ、部下に休暇を取らせようと管理職はあらゆる手段で業務をサポートするという▼日本の有休消化率は6割と先進国で最も低い。建設業や運送業などのエッセンシャルワーカーは個人にかかる業務負荷が大きいためか、まとまった休みを取るのが難しいと言われる▼国土交通省の出先事務所が7、8月の猛暑に現場を休みにする働き方改革に取り組んでいる。取材に応じた所長は、次代の担い手たちに「建設業界がバカンスの取れる進んだ業界だと思ってもらえるようにしたい」と話す▼かつてのフランスも労働者には十分な休暇が与えられなかった。バカンスの取得は、いわば労働者が勝ち取った権利と言える。日本で実現するには課題も多いが、小さな行動が大きなうねりを起こし、やがて変革をもたらすかもしれない。一歩を踏み出す勇気にこそ価値がある。